無重力下でもコーヒーを楽しめる「スペースカップ」

NASAが開発したスペースカップ
NASAが開発したスペースカップ / Credit:NASA / Rochester Institute of Technology

NASAが開発したスペースカップ(またはキャピラリーカップ)は奇妙な形状をしていますが、この形状には宇宙でコーヒーをすするための秘密が隠されています。

このカップは、表面張力によって液体が細い隙間を移動する「毛細管現象」を利用しています。

毛細管現象の身近な例としては、細い管の中を重力に逆らって水がのぼることや、ティッシュに水がしみ込んでいくことなどが該当します。

そしてスペースカップでは、飲み口に向かって全体の形状が細くなっているのが分かりますね。

スペースカップでは、この細い部分で、表面張力の作用により毛細管現象が起こるようになっています。

スペースカップで「すする」宇宙飛行士
スペースカップで「すする」宇宙飛行士 / Credit:NASA(YouTube)_Open Science: Space Coffee Cup(2016)

結果として、重力が無くても、コーヒーが飲み口に流れていくのです。

後は、少し広がった飲み口にたまるコーヒーを「ズズズッ」とすすることで、まるで地上にいる時のようにコーヒーを楽しむことができるというわけです。

またスペースカップを用いると、パック+ストローではあまり感じられなかった「コーヒーの香り」も楽しむことができるのだとか。

もちろん、その涙型の縁と全体の形状により、慎重にコーヒーを注ぐなら、コーヒーがカップからあふれ出ることもありません。

そしてこの発明は特許も取得されており、現在ではプラスチック製のほかに陶磁器製のスペースカップも存在するようです。

陶磁器製のスペースカップ。宇宙でコーヒーを楽しむのにぴったり
陶磁器製のスペースカップ。宇宙でコーヒーを楽しむのにぴったり / Credit:NASA / Rochester Institute of Technology

無重力下でもカップでコーヒーが飲めるなんて素敵ですね。

次にコーヒーブレイクを楽しむときには、宇宙ステーションにいる宇宙飛行士たちのことを思い出してみてください。

ISS 内で、スペースカップを使ってコーヒーを飲むイタリアの宇宙飛行士サマンサ・クリストフォレッティ
ISS 内で、スペースカップを使ってコーヒーを飲むイタリアの宇宙飛行士サマンサ・クリストフォレッティ / Credit:NASA / Rochester Institute of Technology

過酷な環境にいる彼らも、私たちと同じようにカップを傾けてコーヒーをすすっており、ほっと一息ついているのかもしれません。

参考文献

NASA engineered a cup to drink coffee in zero gravity

NASA: Capillary Cup

宇宙船内で水を飲むときは、どうやって飲むのでしょうか?

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。