複雑で手間がかかる相続の手続きを簡素化する制度が5月下旬に始まる見込みだ。金田勝利法相が閣議で報告したもので、「法定相続情報証明制度」という。相続の際に必要な戸籍関係の書類を登記所で「法定相続一覧図」という1枚の証明書にまとめる仕組み。写しを無料でもらえるという。手続きが煩雑で負担が大きいことから、後回しにされがちだった土地や家屋など不動産の相続登記を促す狙いがある。
被相続人の過去の戸籍、相続人全員の戸籍が必要
現在の制度では、相続が発生した際に銀行から預金を払い戻したり、土地や家屋の不動産を相続登記したりする際、被相続人が出生から死亡するまでの戸籍と相続人全員の現在の戸籍書類が必要だ。被相続人の戸籍書類は、最後の戸籍から順に古い戸籍をたどり、すべての戸籍をそろえることが求められるため手続きはかなり煩雑になる。
しかも、口座がある銀行ごと、不動産の管轄が異なる法務局それぞれに、戸籍関係書類をそろえて提出しなくてはならない。手続きによっては返還させないものもあるため、戸籍関係書類を発行するための手数料も、相続人にとって大きな負担となっていた。また預金などの手続きが優先され、土地や家屋は相続が発生してもそのままにされていることが多い。
土地の相続登記が後回しに 所有者不明の土地や空き家増加の一因にも
相続登記をしないままにしておくと、所在が不明な相続人の数が増えるというデメリットもある。
さらに時間が経過することにより、相続人が死亡してさらに相続が発生し、誰が相続人なのかを調査するだけでかなりの時間がかかる。調査に必要な費用も増え、ますます相続登記がされないまま、放置されるケースが増えているのだ。2013年10月時点での空家数は820万戸、1963年の調査開始以降年々増加している。
これによって問題となっているのが、所有者が不明の土地や空き家の増加だ。所有者不明の土地があることで、公共事業が進められず、まちづくりが進展しない。所有者不明の空き家は管理が適切に行われず、崩壊などの恐れがある。
全国417の登記所にて無料で「法定相続情報一覧図」を発行
煩雑過ぎる相続の手続きを簡素化し、相続人の負担を減らすために創設されるのが今回の制度。まずは被相続人の戸籍関係書類をはじめとする書類一式を、全国417カ所に設置された登記所に提出する。すると「法定相続一覧図」が作成され、その写しを無料で発行してもらえる。
法定相続一覧図が利用できるのは、当面不動産の相続登記に限られるが、他省庁や民間の金融機関の手続きでも利用できるように法務省は働きかけている。
文・MONEY TIMES 編集部
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