トランプ氏が警告していた3要件はその後、実現されるか、その方向に向かっているわけだ。これがグレネル氏の「トランプの予言は正しかった」という証となるわけだ。ドイツ民間ニュース専門局ntvは25日、ヴェブサイトで「メルケル氏はウクライナ戦争で責任がある」という見出しで報じていた。グレネル氏は、「メルケル首相が私たちに従っていれば、ウクライナやガザでの戦争は起こらなかっただろう」と語っているからだ。

ちなみに、トランプ氏がNATOを弱体化させたかったというニュースに対し、グレネル氏は「トランプ大統領は、NATOが強くなりたいのであれば、強化に取り組むつもりだ。そのためには全員が公平に貢献しなければならない、という立場だった」と説明する。トランプ氏の「GDP比2%を実現しない国は守らない」という部分だけが拡大して報道されたため、欧州諸国は米国がNATOから離脱するのではないか、といった懸念が囁かれた。ミュンヘンの安全保障会議(MSC)でもトランプ氏の発言が関係者の話題を独占していたほどだ。

メルケル政権(2005年11月~2021年12月)は16年間続いた。その期間、メルケル首相は対ロシア、対中国政策で融和政策を実行してきた。ロシアがクリミア半島を併合した時もメルケル政権はプーチン政権に対して終始甘い対応だった。その結果、プーチン政権はその強権政治を拡大し、経済問題では、メルケル首相は中国の覇権主義を無視し、16年間の政権時代に12回訪中するなど中国経済依存体質を生み出していった。

ウクライナ戦争の勃発後、メルケル氏の政治舞台での登場、発言が急減した。ドイツのメディアもメルケル氏に発言を求めなくなった。物理学学者らしい合理性、論理性を重視し、移民・難民殺到時には福音主義派の牧師の家庭に育ったメルケル首相は人道主義的な対応で多くの移民・難民を受け入れていった。

メルケル氏の外交政策は、非合理性、非論理性、突発性がトレードマークの予言者トランプ氏のそれとは180度異なっていた。だから、両者が会合した時も歯車がかみ合わなかった。16年間のメルケル政権下で国民は経済の安定を享受できたが、ここにきて国民経済は中国経済の低迷もあってリセッション(景気後退)に陥り、外交政策ではそのツケを払わされている。

トランプ前大統領HPより

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年2月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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