通勤通学やお買い物、子どもの送り迎えといった日常使いだけではなく、近年はサイクリングを初めとする趣味の分野でも普及が拡大している電動アシスト自転車。今回の記事では、欧州市場で躍進する中国の新興電動アシスト自転車メーカー「ADO」のシティモデル「ADO Air 28」をレビュー。数々の先進機能を備えるその実力を検証しました。文/写真・佐藤 旅宇※この記事には広告が含まれます
さて、中国の新興メーカーの製品と聞くとその品質を訝しむ人が多いと思います。
正直なところ私も不安がないとは言い切れなかったのですが、実際に車体を目にするとそのイメージは大きく裏切られました。
まず印象的だったのは自転車の基部にあたるフレームがものすごくしっかりしていること。
素材は軽量なアルミニウム合金。
服装を選ばず、乗り降りしやすいステップスルー形状を採用しています。
パイプ径を太くし、大きな力のかかるステアリングヘッド部やクランク部には補強も入れることでしっかりと剛性が確保されています。
また、フレーム各部の溶接跡が目立たないよう研磨処理されている点にも好感を持ちました。
高価なスポーツサイクルなどでよく用いられる手法ですが、こういう細かな部分まで気を使って仕上げているなら中身も当然ちゃんとしているはず、そういう推察ができる訳です。
駆動用のバッテリーをシートチューブ(サドルを支持するフレーム)に内蔵し、ハンドルバーや泥除け、キャリア、前カゴなどのパーツや、ボルトに至るまですべてブラックに統一するなどによって、電動アシスト自転車らしからぬ、洗練されたデザインを実現しています。
車体重量は21.5㎏。
これは一般的な電動アシスト自転車より相当に軽量な数値であり、実際に車体を持ち上げて向きを変えるときなど、その軽さを実感できるレベルです。
モーター(重量物)を後輪車軸に搭載していますが、フロントだけ浮くような感じもなく、前後の重量バランスが適切であることが伺えます。
さらにスマートフォンに専用アプリ(日本語にも対応)をインストールすることで、ナビゲーション機能を液晶ディスプレイ(IPXの360°全方位防水機能)と同期させることが可能です。
専用アプリでは速度、距離、これまでの走行記録やバッテリー残量などの表示のほか、LEDヘッドライトのON/OFF操作もできます。
試乗においてもその洗練されたイメージを裏切りません。
その印象を裏付ける大きなポイントが、駆動力の伝達に一般的な金属チェーンではなく、カーボンベルトを使用しているところです。
ベルト駆動はチェーン式と比べて駆動音が静かで、注油や張り調整などのメンテナンスの必要がなく、汚れたオイルがズボンやスカートの裾を汚すこともありません。
また、チェーン外れのようなトラブルも起きにくいなど、さまざまな利点があります。
「ADO Air 28」のカーボンベルトはノーメンテナンスで最長30,000㎞をクリアする耐久性を持つとアナウンスされています。
一方で、ベルトドライブは変速機を搭載しにくいという特性があります。
「ADO Air 28」も変速機を装備しない割り切った仕様となっています。
変速機は発進時や登坂時など、大きな力でペダルを漕ぐシーンで重宝しますが、電動アシスト自転車の場合はモーターがアシストしてくれるので、普通(電動アシストのない)の自転車ほど重要性は高くないとも言えます。
「ADO Air 28」はモーターを制御するコントロールユニットのセッティングが適切で、ペダルを踏むと速やかにアシストが立ち上がります。
しかし、漕ぎ出しの一瞬はそれなりの踏力が必要です。
とくに登り坂の途中で停車するときなどは、力が入りやすいようペダルの位置をあらかじめ1~2時あたりにしておくと、漕ぎ出し時にバランスを崩すことなく、スムーズに発進できます。
アシストの強さは手元のスイッチでパワーを3段階に切り替えることができます。
日本の電動アシスト自転車の基準に沿っているので、モーターの力だけで自走することはなく、時速24㎞になるとアシストはゼロになります。
ただし、アシスト力はかなり強力で、体感的な印象では「1」でも日本のいわゆるママチャリタイプの最強モードとほぼ同等。
「2」「3」だと登り坂でもかなりのハイペースで走行することができます。
今回の試乗は坂道の多い場所で行いましたが、アシスト「3」で走り続けると10㎞以上の距離を走行しても疲労感は皆無でした。
運動という観点では物足りないですが、多くの人にとって通勤や通学、買い物等といった日常移動ではなるべく快適で肉体的負担が少ない方が便利だと思います。
ただ、寒い時期は走っても走ってもまったく体が暖まらないので、服装には少し注意が必要です(笑)。
もし、運動としての楽しみを求めるならアシストを「0」にするという手もあります。
私もやってみましたが平地なら普通の自転車とほとんど遜色なく走るので少し驚きました。
自転車としてちゃんと作られている事の証拠だと思います。
高い走行性能に合わせてブレーキも高性能な油圧ディスクブレーキが装備されています。
雨天でも少ない握力でスムーズかつ強力な制動力を発揮でき、手の小さな女性でも安心してコントロールできると思います。
また、エアボリュームの大きいワイドなタイヤとサスペンション機能をもつフロントフォークも乗り心地の向上と共に安心感のある乗り味に大きく寄与していますね。
「ADO Air 28」は、アシストユニットがパワフルなだけではなく、それに見合ったフレーム設計や部品が組み合わされており、自転車としてのバランスをきっちりと意識した構成になっているのが好印象でした。
日本のいわゆるママチャリタイプの電動アシスト自転車は、のんびりとした速度で片道5~10㎞程度の移動を快適に行えるよう設計されていると思いますが、「ADO Air 28」は片道10㎞を超える距離でも疲労することなく楽々走り切ることができるでしょう。
不可能と諦めていた長距離あるいは坂道の多い通勤路や通学路だって、この自転車なら無理せず通うことが可能になる、そういう存在です。
いずれにしても、相当にハイパフォーマンスな自転車なので、ヘルメットを着用のうえ、車道走行がマストです。やむを得ない場合以外は絶対に歩道走行をしないようにしましょう。
「ADO Air 28」は、疲れを感じさせないスムーズな乗り心地と強力なアシスト機能が搭載された電動アシスト自転車です。
サビに強いカーボンベルト駆動によって、最大30,000kmケアフリーでメンテナンスもラクラクなので、通勤通学にもおすすめ!
専用アプリとの連携で走行速度や距離、ナビなどを確認できる他、走行しながらのスマホ充電も可能。
日々のサイクリングがより楽しくなる快適機能が満載です。
商品詳細はオリジナルサイトでご覧ください。
電動アシスト自転車は約30年前に日本で誕生した乗り物ですが、自動車に比べ環境負荷が圧倒的に低く、渋滞や運動不足の緩和にも繋がることから、欧州各国をはじめ世界の都市で急速に普及が進んでいます。
そうした潮流を受けて、電動アシスト自転車事業に新たな企業が続々と参入しているのです。
そして「ADO」もそうした新興メーカーのひとつ。
創業は2021年で、当初から海外マーケットをターゲットに展開しており、すでに世界60ヶ所以上のディーラーと提携しているとのこと。
日本で展開されるのは、コンパクトな折り畳みモデル「ADO Air 20」と、今回試乗した26インチタイヤ採用の「ADO Air 28」の二車種。
販売は公式オンラインショップによる直販のみとのこと。
いわゆる「七分組み」の状態を自分で完成させる必要があります。
「ADO Air 28」は一般的な電動アシスト自転車と比べ動力性能が高いため、もし組付け不良によって転倒事故などを起こせば、大ケガに繋がりかねません。
組み立ては自転車整備の経験をある程度持っている人にとっては特別に難しい作業ではないと思いますが、そうでない人は必ず対応してくれるショップを探すか、整備に慣れた人にサポートしてもらいましょう。