顧客の被害状況

 ビッグモーターによる不正行為は顧客にもおよんでいた。消費者庁は10月、2022年度に同社に関する相談が約1500件も寄せられていたと発表したが、同社が提供する撥水加工「ダイヤモンドコーティング」をめぐり、営業担当者がコーティングを望んでいない顧客に対し車の販売は困難だと伝え、顧客から約7万円のコーティング料金を取って販売したものの、コーティングを施さないまま納車した事例もあったという(10月1日付「FNNプライムオンライン」記事より)。また、トヨタ「クラウン」の最上級クラス「RS Advance」の購入を希望し購入契約の締結と頭金の支払いも済んだ顧客に対し、営業担当者が5段階下のクラスの車を納車しようとしていたこともあったという(10月5日付「FNNプライムオンライン」記事より)。

 同社社員のよる悪質な行為は枚挙に暇がない。車の購入者が代金の約100万円を現金で支払おうとしたところ、店舗の営業担当者から総支払額は変わらないので1年だけローンを組むよう説得され、結果的に120万円を支払う羽目になったり、新品タイヤなど30万円相当のオプションを無償で付けるのでローンを組むよう言われた客が、約束を反故にされオプション分を有償で契約させられたケースも(8月11日付「AUTOCAR JAPAN」記事より)。ビッグモーターに売却した車について冠水した過去はないにもかかわらず、冠水した跡があるとして突然700万円の賠償請求訴訟を起こされたり、店舗で売却のキャンセルを告げると店長から罵声を浴びせられるようなケースもあったという(8月11日付「弁護士ドットコムニュース」記事より)。このほかにも、中古車の一括査定サイトでは、登録した顧客のメールアドレスや電話番号などを入手し、その顧客になりすまして勝手に登録を解除する一方で顧客に接触し、他の中古車買取業者との価格競争を回避する「他社切り」という行為まで横行していたという(8月9日付「FNN」記事より)。

 今回の問題をめぐって大きな影響を受けているのが損害保険業界だ。金融庁は9月、損害保険ジャパンとビッグモーターに立ち入り検査を実施。金融庁は、昨年6月頃に損害保険会社各社がビッグモーターとの取引を停止するなかで取引を再開し保険契約シェアを拡大させた損保ジャパンが、昨年7月の金融庁に対する報告で隠蔽を行ったとみており、また昨年7月に大手損保3社での協議の際に、ビッグモーターによる顧客への修理費過大請求について損保ジャパンが『顧客への説明を行わない』旨を発言していたとも伝えられており(産経新聞報道より)、金融庁は厳しい処分を下すとみられている。

 大手損保会社4社は現在、計20万件超を調査対象として過去のビッグモーターからの保険金請求を調査しており、9月末時点で約1万7000件に不正の疑いがあるとされる。同時点の調査件数は5万3000件であり、約3割で不正が行われた可能性があることになり、今後調査が進めば不正件数は増加する(9月30日付朝日新聞記事より)。一方、ビッグモーター独自の調査による不正件数は1275件(調査対象は昨年11月以降)で、全保険金申請の約15%となっており、損保会社側の調査による不正事案の割合との間には2倍の開きがある。

(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)

提供元・Business Journal

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