私たちに豊かな恵みを与えてくれる渓流。世界的にSDGsや生物多様性が叫ばれる中、自然と人間はどんな関係を結ぶべきかを問い直すドキュメンタリー作品が静かな注目を集めている。
研究者、漁協関係者、釣り人の声を丁寧に集めた水産省推薦作品『ミルクの中のイワナ』が4月5日(金)から全国で順次公開される。
神秘の魚を通して未来を考える『ミルクの中のイワナ』
『ミルクの中のイワナ』は環境保全、地域社会などをキーワードに、水産技術研究所や大学などの研究者、漁業協同組合、釣り人らの声を集めたサイエンスドキュメンタリー映画だ。
源流域で暮らすイワナの生態はいまだ謎が多く、“神秘の魚”とも呼ばれるという。その生態系がいま危機に直面している。
自然保護を口にするのは簡単だが、実際に「種を守る」とはどういうことか、研究者や漁業関係者、釣り人など立場を異にする人々の証言を丁寧に聞き取った。そこから浮き彫りになるのは、イワナを通して見えてくる未来の地球の姿だという。
深山幽谷の美しい映像と音楽とともに、人間と自然の間にある普遍的テーマを考えさせられる作品となっている。
本作はすでに野生動物や環境保全をテーマにアメリカ・ニューヨークで毎年開催される国際映画祭「Wild Life Conservation Film Festival 2023」をはじめ、同種のテーマを掲げる世界各国の映画祭で注目を集めている。
自然との共生を模索する坂本麻人監督
監督・プロデューサーを務めたのは大阪出身の坂本麻人さん。ドキュメンタリー映像作家の坂本さんは、過去には岩手県・遠野市を舞台に死生観をテーマにした映像作品『DIALOGUE WITH ANIMA』を監督。
カルチュラル・スタディーズツアー「遠野巡灯篭木(トオノメグリトロゲ)」の総合演出・プロデューサーのほか、アーティスト作品の監督・監修、展覧会のクリエイティブディレクターなど多彩に活躍する。
時代の変容とともに自然との向き合い方が変化する中、監督は「魚との新しい関わり方を模索しなければならない瀬戸際」と表現する。
「何を道しるべに自然や魚と関わり続けていけるのか。また漁協組合員や研究者の方々と、どのように手を取り合うことができるのか。自然や動物との関わりが薄い現代だからこそ、魚や自然との関わりが今の私たちにとって、これからの多様な社会で生きていくための重要な手がかりになると思っています」とコメントする。
『ミルクの中のイワナ』はアップリンク吉祥寺、アップリンク京都をはじめ4月から全国で公開予定だ。川を愛し、その恵みを身近に享受している人ならなおさら見逃せない。
『ミルクの中のイワナ』(英題:A TROUT IN THE MILK)
公開日:4月5日(金)
公開場所:アップリンク吉祥寺、アップリンク京都ほか全国で順次
監督:坂本麻人
時間:70分
(SAYA)