『ラ・ラ・ランド』作品賞間違い事件

アカデミー史上最大ともいわれるハプニングが起きたのは、2017年の第89回授賞式におけるクライマックス、作品賞の発表場面。史上最多のノミネートを果たした『ラ・ラ・ランド』の受賞が発表され、製作陣が受賞スピーチを行なっている真っ最中に、実は『ムーンライト』の間違いだったことが判明した。

プレゼンターのウォーレン・ベイティは発表前に異変に気が付いたが、共同プレゼンターのフェイ・ダナウェイが読み上げてしまった。封筒から取り出した手紙には『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンと書かれていたという。

その後、封筒を管理するパートナー企業の担当者がベイティに誤った封筒を渡したことが判明した。ショーの最中に携帯電話でツイッターをいじっていたことがミスを招いた可能性があり、以降、注意散漫を防ぐために携帯電話やSNSの使用が禁止されるようになった。

政治的スピーチにブーイング

ときに受賞者のスピーチが政治に偏り、物議を醸すこともしばしば。1978年に映画『ジュリア』で助演女優賞を獲得したヴァネッサ・レッドグレイヴは、共演者らに感謝を述べた上で、「ここ数週間、あなた方は毅然とした態度を貫き、少数のシオニストのチンピラによる脅しに屈服することを拒否したことを誇りに思うべきだ」と切り出し、(これら少数のシオニストの振る舞いは)「世界中のユダヤ人の地位を貶め、偉大で英雄的であるファシズムや抑圧との戦いの記録を侮辱するものだ」と非難した。チンピラ発言に会場からはどよめきとブーイングが上がった。

反ファシスト活動を理由にナチスに殺害された女性ジュリアを演じたヴァネッサだが、パレスチナの生活やパレスチナ解放機構の活動を描いたドキュメンタリー作品『パレスチナ人』(1977)の制作に関わったことが、強硬派のユダヤ人組織の反発を招き、会場外でヴァネッサの肖像を燃やすなどの抗議活動が行われた。

ドキュメンタリー作品『ボウリング・フォー・コロンバイン』が長編ドキュメンタリー映画賞を獲得したマイケル・ムーア監督は、2003年の授賞式でブッシュ政権のイラク侵攻を非難した。「われわれはフィクションの選挙結果により、架空の大統領が誕生する時代にいる。架空の理由で戦争をしている」、「われわれは戦争反対だ。ブッシュよ、恥を知れ」と述べると、会場のブーイングにさらされた。