魚の中には、他のどんな魚たちよりも大きいのに、なぜか「小さな物」を選んで食べているものが少なくありません。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
海の「ジェントル・ジャイアント」
世界最大の魚として知られるサメの一種・ジンベエザメ。大きいと15mにも達するという体躯に、大人でも丸呑みできそうな巨大な口を備えています。
間違いなく海の生態系の頂点に立つだろう彼ら、さぞや大きなものを食べているのだろうと思いきや、彼らの主食はなんとオキアミなどのようなプランクトン類。大きな口で海水ごと餌を飲み込み、鰓耙と呼ばれる器官で濾して摂食します。
同じような生態を持つものに、世界最大のエイとして知られるマンタ(オニイトマキエイ)がいます。彼らは巨体でありながら小動物を食べ、穏やかな性質をしているために「ジェントル・ジャイアント」と呼ばれています。
コケを食べる川の巨人
その巨躯からは想像できないものを食べる魚は淡水にも居ます。そのひとつがメコンオオナマズ。
メコンオオナマズは東南アジアの大河・メコン川とその流域に生息し、体長3mにもなる世界最大の淡水魚のひとつ。こちらも子どもくらいなら丸呑みできそうな巨大な口を持ちますが、主食はなんとコケ!
一見すると恐ろしそうな口には歯が生えておらず、岩の表面についたコケや藻を食べて暮らしているそうです。それでこんなにも大きくなるのだというから驚きです。
サンゴをかじる魚たち
巨大なのに意外なものを食べる魚たちの中で、もっとも身近なものはおそらく「ブダイ」でしょう。
ブダイと呼ばれる魚の中でもっとも大きくなるカンムリブダイやアオブダイは、体長1mほどに成長します。その口にはオウムのくちばしのような巨大な歯があり、これで魚たちを噛みちぎって食べる……かと思いきや、彼らがかじるのは海中で木のように動かないサンゴ。
彼らはこれほど大きいにも関わらず草食寄りの雑食性で、サンゴの表面についた藻類を好んで食べます。この大きな歯はサンゴごと藻をかじり取って食べるのに適した形状なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>