インド進出にあたってのリスク管理は
―――インド進出にあたってのリスク管理についても相談が来るとうかがいました。
弊社の領域では、日本の常識が通用しない経理や人事労務、さまざなコンプライアンス対応などの相談を受けます。
たとえば、頻繁に税制・法律が変わったり、税務訴訟に発展して訴訟が長期化したりします。
企業としては極めて「白」に近いことをやってるにもかかわらず、「黒」だと言われて訴訟になるケースはすごく多いんです。
日本の場合、税務訴訟になると多くは税務署が勝つんですが、インドではむしろ逆で企業側が勝つケースが多いです。
ただ、結果的に納税者が(裁判に)勝つまでに2年、3年かかると、弁護士費用、余計な労力やコストがかかってしまう。
労務管理も、州によって労働法が違いますし、インド人のキャラクターも異なります。
労務問題に発展しないように、ルールの整備とあわせて、経営者が従業員とどのような労使関係をつくっていくのかが、ものすごく重要ですし、そのためにはインド人をちゃんと深く理解しないと難しいですね。
―――進出して痛い目を見る企業も少なくない?
従業員が辞めた後に訴訟を起こして訴えるようなケースもよく聞きます。インド企業と合弁会社をつくるときも、合弁先と揉めると、最悪の場合、(相手が)警察と結託して、日本人の取締役がなぜか突然拘束されるという事例も起きています。
もちろん媚びへつらう必要はなく、毅然とした態度で対応をすれば良いのですが、日本式を押しつけず、郷に入れば郷に従えが大切で。やっぱり現地人のネットワークって僕らより強いし、警察と組まれてしまうと、どうしようもないところもあります。
一番重要な土台としても、従業員や取引先と、なるべく訴訟にならないような関係性を築くための日々のコミュニケーションとか信頼関係をつくることは、リスク管理の上ではすごく重要です。
―――そういったリスクがあっても、日本企業がインドに進出する意義は大きいですか?
大きいと思いますね。
インドは、世界にこれだけ(大きな)インパクトを与えているので、インド人を知ることは、これからのグローバル社会で生き残っていくために、とても重要だと思います。
たとえば、インド人と組んでアメリカに進出する企業も出てきています。要は、世界進出するためにインド人の力を借りるということです。こういったことも、重要な戦略の1つになってきます。
市場を見るのか、人材を見るのか、グローバル組織を作るための目線で見るのか、多面的にインドを見ていく視点が必要になってくると思います。