毎年11月1日から翌年1月末まで開催される冬のロングランイルミネーション『小樽ゆき物語』は、冬だけのスペシャルです。約1万球もの青いLEDライトで幻想的に彩られる『青の運河』は、まるでファンタジーの世界に迷い込んだような感覚です。夜の帳(とばり)が降りる運河を散策しました。
小樽運河を埋め立てる計画だった!
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小樽運河は、湾岸に停泊した大型船舶から内陸に荷物を運ぶ目的で、1927(大正12)年に完成しました。海岸の沖合が埋め立てて造られており、緩やかに湾曲しているのが特徴です。小樽の発展に貢献しましたが、戦後になると埠頭が整備されて使命を終えました。
昭和40年代に運河を埋め立てて臨港線全路線を6車線化する計画が立てられましたが、歴史的建造物を含む保存会がこれに反対。10年以上も議論が続いた末に、運河の幅の半分を埋立てて道路とし、残りはポケットパークの配置や散策路を整備する折衷案が採用されました。
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このような経緯を経て小樽運河は埋め立てを免れました。再生された小樽運河は小樽を代表する観光地になり、運河周辺開発も活発化しました。現在は木骨石造倉庫を活用した商業施設や、歴史的建造物と調和したデザインの建物が新築され、小樽有数の観光スポットになっています。もし埋め立てられていたら、「観光都市・小樽」は望めなかったことでしょう。
小樽市民の大好物「さかたのイカメンチ」
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運河に向かう前に小樽駅に近い「小樽中央市場」に立ち寄りました。どこか懐かしい香りを放つ建物は、昭和28年5月に第1棟が落成。翌年には第2棟も完成しました。第3棟は少し遅れて昭和31年に完成しました。当時は近代設備で、あちこちから視察者が訪れたそうです。70年近く経った今でも頑丈そのもの。昔ながらの老舗に混じって、新しくオープンした店もあり、バラエティに富んでいます。
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中央市場の中でもお客さんの人気を集めているのが、第3棟にある「そうざいのさかた」です。長らく市内の入船市場で営業していましたが、入船市場の閉鎖に伴い2017年に中央市場に移転しました。
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看板メニューは「日本一のイカメンチ」です。店主の酒田さんは80代ながら、品切れしないよう、毎日約350個のイカメンチを揚げています。他にも約50種類の惣菜を作るなど、奥様と一緒にパワフルに働いています。
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イカメンチは、刻んだイカゲソとタラのすり身を玉ねぎとキャベツに混ぜて作ります。サクサクした食感を出すためにパン粉と揚げ方を工夫しているそうです。イカメンチが揚がると、「待ってました」とばかりに、たくさんの人たちが買い求めます。ベンチに座り、アツアツのイカメンチを頬張りました。
真冬の恋人たちは幻想的な世界に消えて行く
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1年を通して観光客が訪れる小樽ですが、毎年11月は閑散期を迎えていました。そこで一般社団法人小樽観光協会が主催となり晩秋の小樽の魅力を伝えるために『小樽ロングクリスマス』というイベントを開催しました。継続企画として2013年に『小樽ゆき物語』を開催。好評につき2014年からロングランイルミネーションが楽しめる『青の運河』が始まりました。
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日が暮れると、運河は海をイメージした約1万個の青のLEDライトで照らされます。橋の欄干と岸沿いの装飾のほか、立体的に楽しめるようガス灯にもライトアップが施されています。幻想的な遊歩道をカップルが肩を寄せあって過ぎ去っていきました。悔しいなぁ。羨ましいなぁ。誰かいないかなぁ。
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美しく運河を彩る『青の運河』ですが、1つでもランプが破損すると漏電を起こして消灯してしまうためメンテナンスに細心の注意が払われています。大雪の日は関係者総出で雪かきに追われているそうです。
古きよき時代をライトアップする北運河
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『青の運河』は、クルーズ船乗り場がある中央橋から見るのが一般的ですが、古き良き時代の運河の雰囲気を味わうなら、運河の北部(通称:北運河)がおすすめです。運搬船は姿を消してしまいましたが、停泊するクルーザーが、運河として活用されていた当時を偲ばせています。
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運河沿いに建つ「旧北海製罐倉庫株式会社 小樽工場第3倉庫」も美しくライトアップされています。この建物は1924(大正13)年に各種保税空缶、缶詰類、一般貨物の保管を目的として建設されました。構造は鉄筋コンクリート4階建てで、延べ床面積は7,200平方メートル。
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築後100年近くが経ち、老朽化による維持管理に沢山の費用がかかるため、2020年に解体される予定でしたが、保存を訴えるたくさんの方々の声により、2021年12月に小樽市に無償譲渡されました。潮風で朽ち果てる「滅びの美学」をその目に焼き付けてください。
青の運河
会場:小樽運河浅草橋~中央橋
開催期間:11月1日~1月31日
ライトアップ時間:日没~22時30分
公式サイト:青の運河
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【文・写真 吉田匡和/提供元・たびこふれ】
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