愛媛県は養殖魚の生産量が日本一であり、ブリやマダイ、シマアジをはじめとする様々な大衆魚が養殖されています(愛媛県・えひめ水産応援プロジェクト「愛育フィッシュ」)。そんな養殖漁業が盛んな愛媛県ですが、近年ではスマの完全養殖も行っています。今回は愛媛県で養殖されているスマについてご紹介します。

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養殖魚生産量日本一の愛媛で「全身トロ」と評される【スマの完全養殖】に成功

スマとは

スマはスズキ目サバ科に属する魚で、主に熱帯・亜熱帯で小規模な群れを作って回遊しています。「ヤイト」や「アイッパラ」などの別名を持ち、こちらの名前の方が通りのよい地域もあります。

日本国内では西日本を中心に延縄漁や一本釣りで少量の漁獲があるのみで、入荷がまばらであることから、普段の生活で見かける機会は多くはありません。

養殖魚生産量日本一の愛媛で「全身トロ」と評される【スマの完全養殖】に成功スマ(提供:PhotoAC)

スマは体型がマグロやカツオに似た紡錘形をしていることから、これらと混同されがちですが、胸部に黒い斑点が複数あることが特徴であり、簡単にマグロやカツオと区別することができます。

鮮度低下が早い「スマ」

スマは時折、「全身トロ」や「カツオとマグロの良いとこ取り」と例えられます。脂の乗りもさることながら、身にクセがなく、鮮度の良いものなら刺身はもちろん、焼き物や煮付けで食べても絶品の魚です。

漁獲が少ないことや鮮度の落ちが早いことなどを理由に、産地や地方の市場で消費・流通することが多く、他の地域ではあまりお目にかかれません。

「スマ」の完全養殖に成功

そんな中、スマの養殖を始めたのが、日本でも屈指の養殖魚の生産量を誇る愛媛県でした。スマが持つ食味に加え、1年で2kgほどになるという成長速度に注目したのです。

2013年からスマの完全養殖を目指して愛媛県水産研究センターと愛媛大学の共同研究が始まり、2016年には完全養殖に成功しました。完全養殖されたスマは「媛スマ」と名付けられました。また、一定の条件を満たした最高級ランクの「媛スマ」は「伊予の媛貴海(ひめたかみ)」として飲食店向けに出荷されます。

現在は愛媛県を中心とした10都府県の小売店・飲食店で「媛スマ」が提供されているほか、愛南(あいなん)漁協の公式オンラインショップでも販売されています。

完全養殖には成功したが課題はまだ多い

「完全養殖」は、養殖に使う種苗(稚魚)が人工種苗であり、天然種苗と比較して天然資源を減少させないというメリットがあります。一方、人工種苗はコストが大きいことも特徴で、スマの稚魚を1匹育て上げるのに7000匹のマダイの仔魚が必要と言われています。今後はコストを抑えることも課題の一つになります。

今後、課題が解決し量産が実現できれば、「スマ」が全国の小売店でも普通に見られる大衆魚になるかもしれませんね。

(サカナト編集部)