悪かった川崎Fの立ち位置
この試合の前半開始からの約10分間は、川崎Fの自陣からのパス回し(ビルドアップ)がままならず。[4-1-2-3]の基本布陣でこの試合に臨んだ川崎Fは、GKチョン・ソンリョンや最終ラインからパスを回す際の各選手の立ち位置が悪く、ボールを失っては山東の速攻を浴びた。
試合序盤で特に気になったのが、川崎Fがビルドアップを試みた際の、両サイドバック(MF瀬川祐輔とDF佐々木旭)の立ち位置だ。
ビルドアップ時に瀬川と佐々木が味方センターバックとほぼ横並び、かつタッチライン際に立ってしまうことが多く、ゆえに[4-4-2]の守備隊形を敷いた山東のサイドハーフにこの2人が捕捉されてしまう場面がちらほら。前半4分に浴びた山東の速攻は、もとを辿れば佐々木が自陣のタッチライン際でビルドアップに関与し、相手選手のプレス(寄せ)をもろに浴びたところから始まったものだ。
このシーンでは、佐々木がセンターサークル寄りの立ち位置からタッチライン際へ移動。味方DFジェジエウのバックパスを受けていたが、そのままセンターサークル寄り(中央)のところに留まっていれば、左右どちらにもパスを散らせる状況を作れただろう。
ビルドアップ時にサイドバックの立ち位置が横に広がりすぎた場合、サイドバック自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが必然的に消える。前半4分の川崎Fのビルドアップでは、自陣のタッチライン際でボールを受けた佐々木が相手選手のプレスを浴び、やむなく中央へドリブル。この直後に佐々木が繰り出した縦パスが相手に読まれ、山東の速攻に繋がってしまった。
感じられた山根移籍の影響
川崎Fの自陣からのパス回しを司ってきたDF山根視来が、今年1月にロサンゼルス・ギャラクシー(アメリカ)へ移籍。今回の川崎Fの苦戦の要因は、ここにあるだろう。
ビルドアップにおける山根の存在感が特に際立っていたのが、昨年11月に行われたACLグループステージ第5節、ジョホール・ダルル・タクジム(JDT/マレーシア)戦だ。
この試合で右サイドバックを務めた山根は、ビルドアップ時に味方の2センターバック間に時折入り、これによって[4-4-2]の守備隊形を敷いたJDTの2トップとの数的優位(3対2)を確保。キックオフ直後に山根がこの立ち位置をとったことで、ハイプレスを繰り出そうとしていたJDTの出鼻をくじいた。この山根の気の利いたポジショニングで攻撃のリズムを掴んだ川崎Fは、この試合を5-0で制している。
今回のACLラウンド16第1戦を見た限り、川崎Fは山根抜きのビルドアップのパターンを構築しきれていない模様。同クラブがこの問題を解決するには時間がかかりそうだが、今回のようにビルドアップ時の各選手の配置や隊形変化のパターンがあまりに乏しければ、第2戦でもボールロストを繰り返してしまうだろう。この点が第2戦の見どころとなりそうだ。