三菱自動車がインドネシアで生産する新世代コンパクトSUVの「エクスフォース」をベトナムに輸出。今後、フィリピンなど他のアセアン地域や南アジア、中南米、中東、アフリカに順次拡大展開していくと予告
三菱自動車は2024年2月5日、ミツビシ・モータース・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI、西ジャワ州ブカシ県)において生産する新世代コンパクトSUV「エクスフォース(X FORCE)」の輸出を開始したと発表した。
また同日、インドネシアの首都ジャカルタ市から北方約10kmに位置する、輸出港となるタンジュンプリオク港において記念式典を開催。インドネシア政府や日本政府などから多くの来賓や、三菱自動車の関係者らが参列し、エクスフォースの輸出開始を祝う。なお、輸出はベトナムからスタートし、今後はフィリピンなど他のアセアン地域や南アジア、中南米、中東、アフリカに順次拡大展開していく予定である。
改めてエクスフォースの特徴を紹介していこう。
エクスフォースは三菱自動車の中核市場の1つであるアセアン地域に投入する、新世代SUVの第1弾に位置する。車両コンセプトは“Best-suited buddy for an exciting life(毎日を愉しく過ごすことができる頼もしい相棒)”。三菱自動車が長年培ってきたクルマづくりのノウハウを注ぎ込み、スタイリッシュかつ力強い本格的なSUVデザイン、運転のしやすさや多彩な収納スペースによる高い実用性、広々とした居住空間による快適性、様々な天候や路面における安全・安心の走破性などを特徴としている。
デザイン面については、“Silky&Solid”をコンセプトに据えて内外装をアレンジする。まずエクステリアは、優雅さと堅牢性を高度に融合させたスタイリッシュかつ力強い本格的なSUVデザインに仕立て、アセアンの都会からアウトドアシーンまで圧倒的な存在感を放つスタイリングを創出。ボディ上部はフロントのスリーダイヤからサイド、リアへと連続的に繋がる、流れるような面と、浮いているような視覚効果を与えるフローティングルーフによって、シルクのように滑らかな軽やかさを表現する。対してボディ下部はSUVらしい力強くソリッドなプロポーションとしたうえで、クラストップレベルとなる222mmの最低地上高や18インチのホイールと大径タイヤ(225/50R18)によって優れた悪路走破性を確保した。
各部のデザインも徹底してこだわる。フロント部は前述のデザインコンセプトに合わせて、三菱車のアイデンティティである“ダイナミックシールド”を大幅に進化。パワートレインのパフォーマンスを象徴するフロントグリルを、左右バンパーでプロテクトする造形と立体的に一体化させることで、奥行き感のあるスポーティなフロントフェイスに仕上げる。同時に、LEDデイタイムランニングランプはL字型とスリット状の造形を組み合わせてT字型に発光させ、遠くからでもひと目で三菱車と分かるアイコニックなデザインとするとともに、ワイド感のあるスタンスを強調させた。一方でサイドセクションは、彫刻的な前後フェンダーフレアやキャラクターラインによって、張りのある立体的な面構成にメリハリをつけ、SUVの逞しさと躍動感を表現。そしてリアビューは、台形フォルムを基調にフロントと同意匠のT字型LEDコンビネーションランプやSUVらしい力感あふれる造形のバンパーなどを採用し、ワイドで安定感のある後ろ姿を演出する。ボディサイズは全長4390×全幅1810×全高1660mm/ホイールベース2650mmに、車重は1245kgに設定。また、アプローチアングルは21.0度、デパーチャーアングルは30.5度、ランプブレークアングルは20.5度を確保し、さらに最小回転半径はアセアン地域の街中で頻繁に見られるUターンでも取り回しの良い5.2mを実現した。
コクピットは水平基調の“HORIZONTAL AXIS(ホリゾンタル・アクシス)”コンセプトを採用したインストルメントパネルを配し、前方の視認性を高めるとともに、悪路走行時の車体姿勢の変化をつかみやすくアレンジする。合わせてインパネをドアトリムまで繋がるダイナミックな形状で仕立て、広々とした開放的な空間を創出した。さらに、インパネのパッド素材には三菱車で初めてメランジ生地を取り入れ、ドアトリムまで連続させることによって適度な包まれ感を演出。モダンで洗練された印象を与えながら、汚れにも強い実用性の高い生地によって、自宅のリビングルームのように落ち着いて過ごすことができる快適なスペースを具現化した。
先進機構を精力的に導入したこともトピックで、インパネには直感的な操作を実現する12.3インチのスマートフォン連携ディスプレイオーディオと8インチデジタルドライバーディスプレイを配備。同時にディスプレイオーディオとデジタルドライバーディスプレイを一体化させた大型のモノリス形状のパネルで仕立てて、乗員に先進感を印象づける。また、ディスプレイオーディオでは三菱車初採用となるWebLinkのアプリケーションをワイドな画面で楽しめるほか、スマートフォン画面のミラーリング機能も採用。一方、デジタルドライバーディスプレイにはドライブモード切り替え時にディスプレイ中央に選択したモードのグラフィックを表示させることで、運転中でも直感的にドライブモードを選びやすいように配慮する。画面自体は先進的なエンハンスモードとアナログメーターを模したクラシックモードが選択可能だ。さらに、往年のパジェロに装着していた3連メーターをオマージュした専用デザインのマルチメーターを装備。高度や前後左右傾斜、方角などの情報を組み合わせて表示することで、運転の楽しみをいっそう引き上げている。
キャビン空間自体は、コンパクトなボディサイズながら室内長2601×幅1444×高1221mmという、すべての乗員がゆったりと過ごせる広々とした室内スペースを実現。前席では肩口のゆとりなど、クラストップレベルの座席空間を確保し、合わせてシートはサポート性とゆったり感を両立させることで、レーンチェンジや荒れた路面などでも体が左右に揺れにくく、渋滞時でも窮屈さを感じずに過ごせるようアレンジする。一方で後席は、大人3名が乗車しても快適に過ごせる空間を創出。また、8段階調整のリクライニング機構を内蔵し、乗員がゆったりと座れる角度から、荷室容量をより広く確保できる角度まで、幅広いニーズをカバーした。さらに、車内の各所に便利な収納スペースを豊富に用意。ドアトリムやフロアコンソールなどには、合計21本の600mLのペットボトルが収納可能なドリンクホルダーを設置し、またフロアコンソールには空調の冷気を利用して飲み物を冷やすことができるドリンククーラーを設ける。また、センターコンソールにワイヤレスチャージャー、前席と後席それぞれにUSB Type AとType Cのポート、各席にスマートフォンを置けるスペースを配備するなど、スマートフォンに配慮した収納スペースも充実させた。
ラゲッジルームに関しては、クラストップレベルの床面積を確保するとともに、荷室フロアの高さも調整できるようにアレンジすることで、スーツケースなどの大型の荷物でもゆとりをもって積み込むことが可能。また、後席のシートは4:2:4分割で格納でき、4名が座ったまま長尺物を積むことができるなど、高い積載性を実現した。
パワートレインについては、実績のある4A91型1499cc直列4気筒DOHC16V・MIVECエンジン(最高出力77kW/6000rpm、最大トルク141Nm/4000rpm)に、高効率CVT(Dレンジ変速比2.480~0.396、最終減速比5.698)を組み合わせて前輪を駆動する。また、ドライブモードとしてノーマル/ウェット/グラベル/マッドという4モードを設定。路面状況に応じて選択できるドライブモードでは、前左右輪の駆動力を調整して高い操縦性を実現するアクティブヨーコントロール(AYC)、タイヤのスリップを制御するトラクションコントロール、エンジン制御、パワーステアリング制御を統合制御することで、様々な走行および路面に対応。三菱車初採用となるウェットモードでは、雨天時の濡れた路面では旋回性・安定性が向上し、激しい降雨による冠水路ではハンドルが取られにくくなるなど、ドライバーが不安なく走行することを可能とした。
シャシーに関しては、前マクファーソンストラット式/後トーションビーム式で構成したうえで、アセアン地域の路面状況を再現した国内のテストコースでの走行試験に加え、現地での評価を繰り返してチューニングを施すことで、荒れた路面やうねりのある路面でも快適な乗り心地を実現する。フロントではキャスタートレールの最適化とステアリングギヤ比のクイック化により、操舵感と直進安定性を向上。一方でリアではサスペンションブッシュとショックアブソーバーのシリンダーサイズの最適化によって、操縦安定性を大きく引き上げた。
なお、エクスフォースの日本への導入に関しては、現在のところ正式なアナウンスはない。エクスフォースは2023年度グッドデザイン賞を受賞するなど、その内外装デザインが高く評価されているだけに、早期の日本発売を期待したいところである。
提供元・CAR and DRIVER
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