米国民の日々の生活の厳しさ

 長年の習慣を捨てることは難しい。慣れているものは快適だし、予想外の事態に見舞われることは少ない。米国でも高齢化が進んでおり、国民の意識が保守的になっていることが6月8日に発表された米ギャラップの世論調査で明らかになっている。だが、驚くことにZ世代(1995~2004年生まれ)でも、EVを検討しない可能性が「非常に高い」又は「どちらかで言えば高い」と答えた割合が33%に上った。その理由は日々の生活の厳しさにあるだろう。インターネット金融サービスのレンデイングクラブが3月8日から17日にかけて実施した調査によれば、Z世代の成人の66%が給料ギリギリの生活をしている。

 生活苦はZ世代に限ったことではない。多くの米国人はすでにリセッションの痛みを感じている。ブルームバーグが4月26日から5月8日にかけて調査した結果によれば、日々の生活費の捻出に困難となった米国の成人の数は8910万人に達した。その比率は39%と記録的な水準となっている。EVへの転換は環境面でプラスなのはわかるが、「ない袖は振れない」。

 1970年代、米国政府は高い燃費基準を設けて、自動車メーカーに小型エンジンを積んだコンパクトカーを生産させようとしたが、SUVなど大型車を好む当時の消費者が「ノー」を突きつけた前例がある(5月12日付けForbes)。他人からの強制に強い反発を覚えるとされる米国人の間でEV離れが起きているように思えてならない。バイデン政権はかつての「二の舞」を踏んでしまうのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー)

提供元・Business Journal

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