2019年に社会を騒然とさせた「老後資金2,000万円問題」。2020年は新型コロナウイルスの影響で経済環境が悪化したことで、ますます不安に感じている人も多いのではないでしょうか。若い方であれば長期的な資産運用で堅実に準備することも可能ですが、子育て中であったり40代、50代以上ともなればあまり無理な投資もできないもの。しかし、あきらめることはありません。いまからでもできる2021年から始めたい老後資金対策をご紹介します。

目次
そもそもなぜ老後資金が2,000万円不足するのか
老後資金2,000万円問題の最新情勢は?
老後資金問題への対策案1:ベースとして毎月の自動積み立てを始める
老後資金問題への対策案2:自宅でできる副業を始める
老後資金問題への対策案3:整理を兼ねてフリマアプリで不用品を売却する
老後資金問題への対策案4:自宅を担保に老後資金をつくる

そもそもなぜ老後資金が2,000万円不足するのか

老後資金が2,000万円不足する――。2019年に金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」によって指摘され、社会的な話題になった「老後資金2,000万円問題」ですが、なぜ2,000万円不足するのでしょうか。

その根拠になったのが、総務省統計局が公表した「家計調査報告 高齢夫婦無職世帯の家計収支(2017年)」というデータです。高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)の1ヵ月の生活費が26万3,717円必要なのに対し、収入は20万9,198円しかありません。差し引き5万4,519円の生活費が不足する計算になります。これに“人生100年時代”を見据えて老後生活を「30年」、つまり男性は95歳、女性は90歳まで生きると仮定した場合の生活費の合計不足額が約2,000万円となるというものです。計算は次のとおりです。

5万4,519円×12ヵ月×30年=1,962万6,840円

厚生労働省が作成した「2019年版 簡易生命表」によると、男性の平均寿命が81.41歳で前年比+0.16歳、女性の平均余命が87.45歳で前年比+0.13歳と、緩やかながら伸びています。また、平均余命を見てみると65歳男性の平均余命は19.83歳、60歳女性は29.17歳となっています。

つまり2019年時点では、統計局が定義する「高齢夫婦無職世帯」の老後年数は30年にはおよばないとも考えられますが、医療の進歩などで30年を超えることも珍しくなくなるでしょう。やはり老後資金2,000万円は用意するに越したことはないといえそうです。

老後資金2,000万円問題の最新情勢は?

そんな老後資金2,000万円問題ですが、コロナ禍の2020年現在はどのような情勢になっているのでしょうか。収入の大半を占める年金ですが、2020年度の年金額改定について2020年1月24日に厚生労働省から発表がありました。

それによると、国民年金の老齢基礎年金は前年比+133円の月額6万5,141円、厚生年金の夫婦2人の老齢基礎年金を含む標準的な年金額が前年比+458円の22万724円に改定されました。引き上げ率は+0.2%です。

また、老後資金2,000万円問題の根拠となっていた「家計調査報告」。金融庁が引用した2017年版から2年後の、2019年版が発表されています。それによれば、高齢夫婦無職世帯の家計収支は、毎月の生活費の不足分が3万3,269円にまで減少しています。生活費は増加していますが、それ以上に社会保障給付などの実収入が増加したことで、結果的に不足分が減少したようです。

この2019年版の資料に基づいて、老後資金2,000万円問題と同様の計算を行うと次のとおりになります。

3万3,269円×12ヵ月×30年= 1,197万6,840円

老後に必要な資金は2,000万円から約800万円も少ない、約1,200万円となっています。

一方で、給与収入は新型コロナウイルスによる経済の縮小を受けて、厳しい推移が続いています。総務省「労働力調査」によると、就業者数(季節調整値)は2020年1月から8月にかけて6,740万人から6,659万人と81万人減少しています。また厚生労働省の「毎月勤労統計(2020年8月確報)」に目を向けると、現金給与総額は2020年4月から8月にかけ前年比マイナス1~2%が続いています。

たしかに、老後資金2,000万円問題は話題になった当時よりも必要資金が少なくなったという見方もできます。しかし、その原資となる現役世代の経済状況はコロナ禍の影響を受け続けており、決して楽観視することはできません。

加えて、2021年も引き続き、世界経済はコロナ禍の影響を色濃く受ける可能性が高いと見られます。統計以上に目の前の現実を直視し、万が一に備えることが大切です。そこで、いまからでもできる老後資金を確保するための対策案をいくつかご紹介しましょう。

老後資金問題への対策案1:ベースとして毎月の自動積み立てを始める

これまで余裕があるときだけ貯金していた人は方針を改め、銀行口座からの自動引き落としによる積立預金で老後資金をつくるのもよいでしょう。一度、自動積み立てを始めてしまえば、都度、貯金口座に振り込む必要もなく、「気づいたら結構貯まっていた」という達成感を感じられることもあります。

積立開始年齢別に、月5万円(年間60万円)の積み立てを65歳まで続けた場合のシミュレーションは下表のようになります。

▽開始年齢別積立残高シミュレーション(左軸が開始年齢、上軸が到達年齢)単位:万円、利息は含まず
 

25歳 30歳 35歳 40歳 45歳 50歳 55歳 60歳 65歳
20歳 300 600 900 1,200 1,500 1,800 2,100 2,400 2,700
25歳 300 600 900 1,200 1,500 1,800 2,100 2,400
30歳 300 600 900 1,200 1,500 1,800 2,100
35歳 300 600 900 1,200 1,500 1,800
40歳 300 600 900 1,200 1,500
45歳 300 600 900 1,200
50歳 300 600 900
55歳 300 600
60歳 300

31歳までに開始すれば、65歳で2,000万円に到達することができます。しかし、40歳から始めても1,500万円にはなるので、不足する500万円は以下に紹介する対策で補えば、2,000万円に到達するのも夢ではありません。

老後資金問題への対策案2:自宅でできる副業を始める

新型コロナウイルスによる経済情勢の悪化もあり、給与の伸びは期待できず、最悪の場合は減収になるのが珍しくない時代になりました。最近は政府が進める働き方改革の影響もあり、社員の副業を認める企業が増えています。

そこで、「自宅でできる副業を始める」という選択肢も、検討の余地があります。自宅でできるおもな仕事には以下のようなものがあります。

・パソコンのデータ入力
・ブログやホームページのアフィリエイト
・フリーライター
・インターネット上のアンケートモニター
・ハンドメイド製品の販売
・ネットショップ
・テープの文字起こし
・テストの添削や採点
・CADオペレーター
・イラストレーター
・YouTuber

このうち、名刺などの「データ入力」と「アンケートモニター」は、パソコンの扱いに不安がなければ、すぐに始められます。そのかわり単価は1本数円程度ですので、小遣い稼ぎと考えたほうがよいかもしれません。ほかの仕事は多少の技術・知識・経験・アイデアなどが必要になります。軌道に乗れば月数万円の収入になる場合がありますので、副業として検討したい仕事です。

老後資金問題への対策案3:整理を兼ねてフリマアプリで不用品を売却する

フリーマーケットアプリを利用して不用品を売却するのも時流に乗った資金調達方法といえます。かつては不用品を売却して現金化するには、古書店やリサイクルショップなどの店舗に行くのが主流でした。店舗に持ち込んでも定価のわずか数%の買取価格にしかならないことも多く、ものによっては買取を断られることもありました。

しかし、フリマアプリならその品物を欲しい人がピンポイントで探しているため、店舗に売りに行くよりも高値で売却できる場合があります。50代以上の方であれば、終活を兼ねて不用品を整理するきっかけにもなり、一石二鳥の対策といえます。ほかにも途中でやめてしまった半端なコレクションがあれば、思い切って“断捨離”してもよいでしょう。

老後資金問題への対策案4:自宅を担保に老後資金をつくる

万一、積立貯金ができず、副業が上手くいかなかった場合でも、老後資金づくりの最終手段があります。

「リバースモーゲージ」に申し込むのがその対策です。リバースモーゲージとは、自宅を担保にして金融機関から融資を受ける新しいタイプの資金調達方法です。存命中は元金の返済は必要なく、利息のみ支払えばよいため、毎月の返済負担が少ない融資商品として注目されています。

元金の返済は、名義人の死亡後に担保に入っている不動産が売却されたときに行われます。マンションは対象外の場合があるので、金融機関に確認することが大事です。リバースモーゲージには申込年齢制限があり、金融機関によって55歳以上から申し込むことができます。

もうひとつ、「リースバック」という資金調達方法もあります。こちらは自宅を売却して現金化し、売却後も自宅に家賃を払って住み続けることができる商品です。リースバックはマンションも対象になり、年齢制限もありません。

リバースモーゲージもリースバックも自宅に住み続けられる点では同じですので、老後資金がどうしても不足し、子ども世帯からの援助も期待できない場合には検討してみるのもよいでしょう。ただし、それぞれデメリットもあるので、金融機関のホームページで商品内容をよく確認して検討する必要があります。

以上、老後資金2,000万円問題の現状と、これから取るべき対策についてみてきました。より自助努力が求められる時代になりますが、2021年が日本経済にとっても、個人にとっても回復の年になることが望まれます。

※本記事でご紹介した内容は一例です。実際に資産運用などを行う場合は、最新の情報を確認し、自己責任にて行ってください。

文・丸山優太郎/提供元・J PRIME

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