脳内で記憶を管理する場所は海馬と呼ばれる。2014年のノーベル生理学・医学賞に英ロンドン大のジョン・オキーフ教授、ノルウェー科学技術大のマイブリット・モーザーとエドバルド・モーザー夫妻の3人の脳神経学者が受賞したが、3氏は「場所細胞」と呼ばれる機能を有する脳内の海馬について研究し、記憶の仕組みを解明したことが授賞理由だった。

超党派の上院国家安全保障協定に関して話すバイデン米大統領(2024年02月04日、ホワイトハウス公式サイトから)
なぜ突然、海馬の話をするかというと、バイデン米大統領が過去に会談した政治家の名前が出てこなくなったり、最近では長男の亡くなった年月を忘れてしまうという状況がメディアで報じられ、世界最強国・米国大統領の海馬について懸念しているからだ。81歳と高齢だから、時には忘れることはある。しかし、バイデン氏は米大統領だ。そして今年11月の大統領選で再選を願っている人物だ。その海馬が正常に機能しないとすれば、バイデン氏個人の問題ではなく、世界の問題といわざるを得ないのだ。
当方は脳神経学者でないから、音楽の都ウィーンからワシントンのバイデン氏の海馬の状況について遠距離診察をする考えはないが、やはり心配だ。世界は2024年に入り、多くの予言者が語っていたように、戦争、紛争、混乱、天災、人災が起きてきている。その時、米大統領の海馬がうまく機能せず、紛争解決や調停工作で支障が生じたらどうするのか。大統領選でバイデン氏が勝利しようが、トランプ氏(77)がホワイトハウスにカムバックしようが、両者は高齢者だ。トランプ氏の海馬は今のところ大きな支障がないみたいだが、決して大丈夫だとは断言できない。米国の政界には健全な海馬をもつ若い政治家はいないのか、とついつい呟きたくなる。
当方はコナン・ドイルの名探偵シャーロック・ホームズとアガサ・クリスティ(1890~1976年)の名探偵小説の主人公エルキュール・ポワロが大好きだ。彼らに共通していることは記憶力が抜群だという点だ。シャーロック・ホームズは「マインドパレス」(記憶の宮殿)という言葉をよく表現するし、ポワロは「小さな灰色の脳細胞」という言葉が口癖となっている。