個人事業主として配送業を行える、ネット通販「Amazon.co.jp(アマゾン)」の「アマゾン・フレックス」。専用アプリに登録した個人が、アプリで決められた荷物を届けて報酬を受け取るというサービス。働く時間や場所は自分の裁量で決められるため「自由度の高い働き方」という魅力はあるものの、一部ネット上では「休みなしで働いて日給15000円…昼食も食べる時間もない」「配送量と報酬の割が合わないと感じる」などのコメントが寄せられている。他にも「社保なし、車代・任意保険・ガソリン代は自費なので、結局そんなにもらえない」「時間効率を上げたいがために雑な運転になり、事故率が高くなっている印象」といったネガティブな声が。
では、アマゾン・フレックスは個人事業主にとって労力に見合う働き方といえるのだろうか。物流ジャーナリストの坂田良平氏に聞いた。
アマゾン・フレックス配送員は基本的に誰でも始められる
はじめにアマゾン・フレックスの仕組みについて整理しておこう。
「アマゾン・フレックスを始めるためには軽自動車(軽バンが中心だが、現在は軽乗用車でも可能)を自身で用意することになりますが、法律上営業用ナンバーを取らなければなりません。ただ手続きは簡単で、陸運局に行き30分程度で許可が取れます。なおかつ軽バンは、新車で150~200万円くらい、中古だと最低10万円ほどで購入可能なので、独立して一国一城の主になりたいと考える人にとっては非常に始めやすいといえるでしょう。
アマゾンは現在、荷物を配達するチャンネルが3つあります。まず1つ目は運送業者に依頼する方法で、ヤマト運輸などの宅配便事業者や協力運送会社に頼むケースです。2つ目はアマゾン・ハブというサービスで、個人商店などにアマゾンからまとめて荷物を届け、そこから届けてもらおうという仕組み(自転車や徒歩で配るイメージ)が始まっています。イメージとしては、個人商店や飲食店などの店主や従業員などが休憩時間中に配達のアルバイトをする感じです。そして今回のアマゾン・フレックスとは貨物軽自動車運送の個人事業主で、登録するだけで配達の仕事ができる業務委託の形です。アマゾンは経営戦略として、お客様に荷物を届ける方法を3つに分け、配達リソースを分散し確保すると同時に、配達コスト上昇といったリスクを分散させているのです」(坂田氏)
現在のアマゾン・フレックス配送員の待遇は、始まった当初から変わっているという。
「アマゾン・フレックスが始まった当初は1つ配送したら160円で、日給換算すると2万6000円近く稼げていました。余談ですが、初期はアマゾンで使える商品券を1カ月4万円もらえるということもあったそうです。ところがこれは一時的な人集めの方法にすぎず、2年半前くらいから日給制になり、1日あたり200個くらいという事実上のノルマが課されるようなってきました」(同)