ヒトに悪さをする魚の寄生虫といえばアニサキスが有名ですが、それよりさらに大きく、太く、恐ろしい見た目の寄生虫が存在します。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
魚好きを悩ませるアニサキス
冬になるとタラやニシン、アンコウといった寒い海を好む魚たちが美味しくなります。食卓に登る機会も増えるのですが、これらを調理するときに頭を悩ませるのがアニサキスです。
アニサキスは今や説明の必要がないほどまでに有名になった海水魚の寄生虫。生きたまま人の体内に入ると、ときに胃や十二指腸の中で暴れまわり、激痛をもたらすために恐れられています。
熱に弱く、短時間の加熱でも死に至りますが、やはり脂の乗った美味しい魚は生で食べたくなるもの。刺身や寿司などで食べたり、あるいは加熱する料理でも加熱が不十分であったりすればアニサキスのリスクはあります。
北の魚に多いのはなぜ
これらのアニサキス、有名なのはやはりサバやサワラのような青魚でしょうが、実際のところ最もしばしば見かけるのはタラ、アンコウ、ホッケ、サケといった北の魚たちです。
アニサキスはクジラやアザラシなどの海獣の体内で成虫になり、その卵は宿主の糞に混ざって海中に撒かれ、それを食べたオキアミの体内で孵化します。そのため海獣類やオキアミの生息数が多い北日本において、魚へのアニサキスの寄生率が高くなるのです。
アニサキスの化け物?「シュードテラノーバ」とは
アニサキスは一般的に我々が考える寄生虫よりも大きく見つけやすいため、寄生の度合いがわかりやすいです。しかし、北日本の魚にはアニサキスに似たまた別の寄生虫が見られることがあります。
その寄生虫とは「シュードテラノーバ」。アニサキスと同じ線虫で、同様に内臓や腹膜、エラなどに寄生しています。種類的にも比較的近縁なのですが、見分けるのは難しくありません。それはシュードテラノーバのほうが大きくなるため。
アニサキスは大きくても2cm強ですが、シュードテラノーバは4、5cmあるものも珍しくありません。またアニサキスは通常とぐろを巻いていますが、シュードテラノーバは常に真っ直ぐでとぐろを巻くことはありません。見た目はアニサキスのお化けといった感じで、かなり迫力があります。ウネウネ系の生き物が苦手な人が見たら、きっとキッチンから逃亡してしまうでしょう。
このシュードテラノーバですが、ヒトの体内に入ったときにはやはり同様の症状を引き起こすことがあるそうです。アニサキスよりも見つけやすく、魚の筋肉中に入り込むことも少ないようですが、北の魚を食べるときは気をつけておきたいですね。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>