揃わなかった最大の武器
最後まで両翼という日本最大の武器が揃うことはなかった。三笘とFW伊東純也(スタッド・ランス)は独力で相手を崩せ、苦しい時間帯には陣地を回復してくれる存在。2人が揃い踏みしなかったことで、かえって彼らの存在感を強めたのは皮肉な話だった。
左の三笘は所属チームで負った左足首の怪我の影響で、決勝トーナメント2試合での途中出場のみ。「らしさ」を見せたのはバーレーン戦のみだった。右の伊東はグループリーグ初戦からスタメン出場を重ねたが、その後週刊誌の報道によって大会からの離脱を余儀なくされた。
日本代表にはほかにも、MF堂安律(SCフライブルク)やMF久保建英(レアル・ソシエダ)、FW中村など素晴らしい選手がいる。しかし、彼らは周囲との連動性の中で活きる選手たち。相手に分析されて分断され、自らの活気にも欠けた今大会で継続的な活躍を見せるのは難しかった。
影響を与えた地の利
言い訳がないわけではない。サッカーには地の利が存在する。W杯では、ブラジル大会でドイツが優勝した2014年までの長きにわたり、欧州で開催された大会は欧州の国が、南米で開催された大会は南米の国が優勝してきた(1958年のスウェーデン大会を除く)。
今大会の開催地はカタールで、やはり同地域の西アジア勢が躍進した。本大会に出場した24か国のうち、西アジアの国は11か国。そのうち9か国が決勝トーナメントに進出した。
準決勝ではヨルダンとカタールが勝利し、西アジア勢の決勝戦に。アジア全体のレベルアップは事実にせよ、地の利が明確に見える大会となった。
失われた貪欲な姿勢と競争
東アジア勢には難しい大会になったとはいえ「仕方ない」で済ませるわけにはいかない。少なくとも準々決勝のイラン戦では先制しており、勝つことは不可能ではなかったはずだ。ところが劣勢となった後半、森保一監督は手を打たなかった。試合後には「交代カードをうまく切れなかった」と話したが、この大会を通じてパフォーマンスの良くない選手を使い続ける例はいくつも見られた。
グループリーグのGK鈴木彩艶、グループリーグ1~2戦目のDF菅原由勢(アルクマール)、イラク戦やイラン戦のDF板倉などは実際に失点に絡んだ。監督が選手への信頼感を示すことは重要だが、クラブチームと代表、それも重要な大会では基準が異なって然るべきだ。
現在の日本代表は、全員がプロとして相当な活躍を見せてきた選手たちである。各クラブチームで競争を勝ち抜いた選手だからこそ、代表戦ではクラブチーム以上の激しい競争があるべきではないだろうか。パフォーマンスが良くなければ積極的に入れ替えるべきだと考える。少なくとも無理に起用を続け、かえって評価を落とすのは避けた方がいい。今大会では敗退という結果以上に、選手たちから貪欲な姿勢が見られなかったことに危機感を覚えた。限られた時間の中で、その姿勢を生み出すことこそが、代表チームの監督やスタッフが果たすべき最低限の仕事ではないだろうか。