国税庁が毎年発表している「民間給与実態統計調査」というものがある。国が租税収入を見積るために、民間の事業所における年間給与の実態を調べたものだ。2013年の調査によると、年収1000万円以上の給与所得者は、全体(4645万人)の3.9%となっている。そのうち、日本の年収トップ1%を占めているのは、年収が1500万円以上の人であるということがわかる。
「年収上位」を占める人の日常は意外に地味
多くのサラリーマンにとって、年収1000万円とは「高額所得者への入口」というイメージがあるだろう。ところが、実際には「そんなに余らない」のが現実である。その一因が税金にある。累進課税方式をとっている日本では、当然ながら収入が上がるほど税金も高くなる。だから「年収1000万円の実態」とは、「ちょっとした贅沢ならそれなりにできるが、かといってお金があり余るほどではない」といった感じである。
これが年収1500万円を超えるようになると、少しずつ余裕が出始める。本格的にお金が余るようになるのは、年収2000万円を超えてからである。とはいえ、それも「常識の範囲内で使用すれば、特に節約しなくてもお金が残る」というだけの話であり、お金がいくらあろうと、湯水のように使えばなくなることに変わりはない。
テレビなどで放映している「金持ちの豪遊」は一種の演出であって、トップ1%の人たちの日常というのは、「ここぞ!」という時以外は意外に質素な場合が多い。
年収1000万円プレイヤーに足りない「税金」への意識
では、年収上位2.9%(1000万円以上)と、トップ1%(1500万円以上)を分けているものとは、一体何だろうか。それは「危機意識」である。何に対する危機意識なのかというと、「税金」と「将来」に対してである。
たとえば外資系保険会社のトップセールスマンは、上位0.5%に入ると年収6000万円以上を稼いでいる猛者もいる。彼らは収入が多い分、そのままにしていたら、引かれる税金も大きくなる。仮に課税所得金額が1800万円超で4000万円以下の人の場合でも、所得税だけで40%。そこに住民税10%や社会保険料を加えると、約63%の税金がかかるのである。
だからサラリーマンの高額所得者の多くは、不動産を所有している。不動産を持てば損益通算を活用して税金を安くできるし、資産として家賃収入や売却差益なども見込めるからだ。
トップ1%は、お金の「縦と横の動き」を効果的に使う
年収が高い人たちは、お金を稼ぐのが簡単ではないことを熟知している。特に、今稼いでいるお金が大きければ大きいほど、働けなくなったときのことを考え、資産を増やすための手立てを打っている。
そもそも資産形成の基本とは、キャッシュフローと呼ばれる、毎月出入りするお金の中からストック(蓄え)をつくり、それを投資にあてることである。より多くの資産を築いていくには、お金の「横の動き」と「縦の動き」を効果的に使うことだ。
お金の「横の動き」とは、継続して入ってくる収入のことを指し、たとえば給料や月々の配当金、家賃収入などである。対する「縦の動き」とは、臨時で大きなお金が入ってくることをいい、満期で返ってくるお金や資産売却益などである。
資産を増やす好循環を回すためには、
「フローからストックをつくる→資産購入→お金の横の動きと縦の動きを活かして、効果的に収益を増やす→フローとストックの増加→新たな資産の購入」
という流れをつくることである。投資とは、フローとストックのバランスを見ながら資産を運用していくことなのである。
トップ1%にとって節税は切実な問題
実際、年収1000万円も2000万円も、大きなお金であることに変わりはない。だが年収が1000万円台の人というのは、だいたいがキャリア形成の途上にあって、なかなか節税まで考える余裕がないのが正直なところではないだろうか。筆者もサラリーマン時代に不動産投資をしていたが、その頃はフローやストックを増やすことを目的としており、節税までは頭が回っていなかった。
単純にいって、収入金額が倍以上違うと、税金の痛みもその分大きくなる。トップ1%の人が必ずしも最初から税金に詳しかったわけではなく、差し引かれる金額の大きさから、危機意識が高くならざるをえなかったというのが、本当のところだろう。
いずれにしても、給料がなかなか増えていかない時代の中で、サラリーマンにとって「手元に残す」という発想は大切である。「どうせ自分には関係ない」とは思わずに、知らないことも積極的に受け入れ、攻めと守りの両面で考えることが大切なのである。
文・俣野成敏(またの なるとし)/ZUU online
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