時計を作っているなかで「なぜ」と感じた国産汎用ムーヴメントの意外な点についてお届けしている当連載。先週は GMT機能を装備した国産外販用自動巻きが、セイコーとシチズン・ミヨタから2023年になって初めて、しかも両者揃ってリリースされた。それに伴いGMTウオッチの製品化が加速していることを紹介した。

4回目となる今回はその続編として、これまで筆者も当たり前のこととしてあまり気にもしていなかったが、今回GMTウオッチを実際に作ってみてあらためて「なんでだろう」と不思議に感じた点について書きたいと思う。

前回と重複するがまずはGMT機能について説明すると、ロレックスの人気モデル、GMTマスター II で世界的に知られている機能で、住んでいる国の時刻(ホームタイム)と時差のあるもうひとつの国の時刻(ローカルタイム)の二つの時間帯をひとつの腕時計で表示できる機能である。そのため時分針とは別にもうひとつGMT針と呼ばれる副時針と、24時間表示のベゼルを装備しているのが一般的な仕様だ(下の写真参照)。

【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=GMT針(副時針)と24時間表示のベゼルを備えたGMTウオッチの基本スタイル、『Watch LIFE NEWS』より 引用)

そしてここからが本題。このGMT機能だが、第2時間帯の設定方法が違う2種類のタイプが存在することを意外と知られていない。ひとつは“時針単独操作型(フライヤー型)”、もうひとつは“GMT針単独操作型(コーラー型)”だ。これは、日常で実際にGMT機能を使う際に、その目的によっては使い勝手が大きく違ってくるため、ユーザーにとっては本来とても重要なのである。

しかしながら、メーカー情報には「GMT機能」あるいは「デュアルタイム表示」の記載だけで、それがどのタイプなのかをひと目でわかるように明示しているものが極めて少ない。このことに筆者もあらためて「何で」と驚かされたというわけである。操作方法の取扱説明書を読んではじめてどちらのタイプかがわかるというのがほとんどだった。

【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=「GMT針操作型」のセイコー製GMTキャリバーNH34を搭載したアンダーンのベースキャンプ ステルス レザー、『Watch LIFE NEWS』より 引用)

ではこれらはどう違うのか簡単に説明すると、“時針単独操作型”は、時針だけを動かすことができるタイプのため海外へ出張した際に渡航先の時刻を時分針に簡単に変更できるというメリットがある。つまり海外旅行に適したGMTということで“トラベルGMT”とも呼ばれたりする。なおホームタイム(日本時間)はGMT針で常に確認できる。ちなみにロレックスの現在のGMTマスター II はまさにこのタイプだ。

一方の“GMT針単独操作型”は、GMT針だけを操作するタイプ。時分針はホームタイム(日本時間)のままでGMT針だけを移動して海外の時刻をベゼル上の数字に合わせる。設定が簡単なため日本にいて海外とのやり取りの際など、メインは日本時間で時々海外の現在時刻を確認したいという場合に好都合なタイプだ。こういった点から“オフィスGMT”とも呼ばれる。

このように同じGMTウオッチでも使い勝手がまったく違う。特に海外旅行で使いたいという人には現地時間の設定が簡単にできる前者が断然おすすめなのだ。ただデメリットもある。それはGMT針操作型に比べて高機能ゆえに価格が高いということ。

【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=「時針単独操作型」のミヨタ製GMTキャリバー9075を搭載するアウトラインのGMT-1950、『Watch LIFE NEWS』より 引用)

GMT針操作型はひとつ上に掲載したアンダーンのベースキャンプ ステルス レザー(4万9500円)のように4万円台から販売されるなどかなりリーズナブルだが、時針操作型となると、 上の写真の“アウトライン GMT-1950”のように、ミヨタ製機械で税込定価9万9000円と10万円を切る価格のモデルもあるが、セイコーやシチズンの国産大手が出しているGMTウオッチも含めてそのほとんどは安くとも10万円台かそれ以上と高額となってしまうのだ。

ちなみに、ここに取り上げたアンダーンとアウトラインの2種類のGMTウオッチはどちらも外販用GMTムーヴメントが搭載されている。アンダーンはセイコー(TMI)製のGMT針操作型キャリバーNH34。一方のアウトラインはシチズン・ミヨタ製の時針操作型キャリバー9075だ。つまり、セイコーもミヨタも外販用としてリリースしているのはそれぞれ1種類のみ、そのためどちらの外販用ムーヴメントを使っているかでGMT機能のタイプも判断できるというわけである。

参考までにセイコーとシチズンの商品に使われている製品版のGMT自動巻きムーヴメントは次のとおりである。
【セイコー】4R34(GMT針型)、6R54(GMT針型)、6R64(時針型)
【グランドセイコー】9S66(時針型)、9S86(時針型)
【シチズン】9054(時針型)

機能を優先するのか、それとも価格か。いずれにせよ購入ユーザーにとって判断するうえでまずはGMT機能がどちらのタイプなのかは重要な情報。その意味ではもっと明確に表示するべきではないかと思う。

最後に次ページにおいて、高額なグランドセイコーを除いた国産GMT自動巻きムーヴメントを搭載したGMTウオッチから、ここ半年以内にリリースされた新型を参考までに“時針単独操作型”と“GMT針単独操作型”とに分けて写真とともに紹介。ぜひチェックしてみてほしい

【アウトライン GMT-1950についての詳細は】
アウトライン公式サイト
outlinewatches.tokyo/collection/gmt1950

[時針単独操作型]

【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=●シチズン|シリーズエイト880メカニカル。SS(41mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.9054)。22万円、『Watch LIFE NEWS』より 引用)
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(画像=●シチズン|プロマスター メカニカル GMT。SS(44.5mm径)。20気圧防水。自動巻き(Cal.9054)。13万2000円、『Watch LIFE NEWS』より 引用)
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(画像=●セイコー|プレザージュ JAL国際線就航70周年限定モデル。SS(42.2mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.6R64)。18万7000円、『Watch LIFE NEWS』より 引用)
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(画像=●アウトライン|GMT-1950。SS(37mm径)。5気圧防水。自動巻き(ミヨタ製Cal.9075)。9万9000円(記事掲載モデル)、『Watch LIFE NEWS』より 引用)

GMT針単独操作型]

【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=●セイコー|プロスペックス ダイバースキューバ。SS(42mm径)。200m潜水防水。自動巻き(Cal.6R54)。20万9000円、『Watch LIFE NEWS』より 引用)
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(画像=●セイコー|5スポーツ Field Street Style GMT。SS(39.4mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.4R34)。5万5000円、『Watch LIFE NEWS』より 引用)
【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=●ケンテックス|マリンGMT。SS(44.8mm径)。150m防水。自動巻き(セイコー製Cal.NH34)。9万9000円、『Watch LIFE NEWS』より 引用)
【コレを知らないと失敗する!】実際にGMT時計を作って知った。セイコー、シチズンの汎用ムーヴメント事情(4)|OUTLINEニュース no.127
(画像=●アンダーン|ベースキャンプ ステルス スチール。SS(40mm径)。100m防水。自動巻き(セイコー製Cal.NH34A)。5万9400円、『Watch LIFE NEWS』より 引)

提供元・Watch LIFE NEWS

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