三菱・三井・住友などの企業グループは、財閥が解体された今もなお強い影響力を持っている。各グループには日本を代表する大企業が属し、その頂点には選ばれた経営者が名を連ねる組織がある。
日本のGDP10%を持つ財閥系筆頭、三菱グループ 「金曜会」
実業家・岩崎弥太郎が創業した、三菱財閥の流れをくむ同グループにはトップ組織「金曜会」があり、現在29社が加盟している。中でも三菱重工業 <7011> 、三菱東京UFJ銀行、三菱商事 <8058> は御三家と呼ばれ、その他、三菱地所 <8802> 、三菱電機 <6503> など三菱の名を冠する企業が多い。意外な企業では、明治安田生命保険、キリンホールディングス <2503> 、ニコン <7731> などが入っている。
ニコンはかつて「日本光学工業(NIPPON KOGAKU K.K.)」という社名で、三菱の資本で1907(大正6)年に設立された会社だ。1888(明治21)年に発売された「キリンビール」は、明治を代表する実業家で、三菱財閥の「番頭」荘田平五郎に名づけられたことが縁である。
一流企業の社長クラスが集まる金曜会は、毎月第2金曜日に例会を開催している。例会の内容はグループ共通での社会貢献案件の審議など、あくまで親睦が目的とされている。「組織の三菱」と言われるように、その繋がりは強い。かつて三菱自動車 <7211> が2度の不祥事で経営危機に陥った時も、救済に動いたのは御三家を筆頭とする三菱グループだった。
意外なあの企業も所属、三井グループ 「二木会」「月曜会」
戦前最大の財閥の流れをくむ三井グループには、「二木(にもく)会」という、系列の中核会社の社長・会長会がある。現在の会員会社は26社で、商船三井 <9104> 、三井物産 <8031> 、三井不動産 <8801> など三井の名を冠した会社以外に、東芝 <6502> 、東レ <3402> 、トヨタ自動車 <7203> 、日本製粉 <2001> 、富士フイルムホールディングス <4901> 、三越伊勢丹ホールディングス <3099> 、王子製紙、IHI <7013> などが加盟している。
「三井」の冠がついていない各社は、いまいちグループのイメージが薄いかもしれないが、そのルーツを辿っていくと合点がいく。たとえば三越伊勢丹は、三井財閥の先祖といわれる伊勢商人・三井高利が、伊勢から江戸に出て創業した越後屋三井呉服店がその前身である。
東芝の始まりは、1875(明治8)年に東京・銀座に造られた電機工場だ。1893(明治26)年、三井財閥から実業家の藤山雷太を招聘して「芝浦製作所」として再スタートし、今に至っている。現在、債務超過が懸念される東芝を救済する企業として、名前が挙がっているのが、同会のIHIある。IHIは元来独立系の企業だが、かつて東芝の再建に関わって以来、密接な関係にあり、その縁で会に加盟している。
「二木会」は、毎月第2木曜日に集まることから名付けられた。今では毎月の会合のほかに「新年互礼会」「叙勲・褒章受章者祝賀会」などを数百人規模で行っている。
三井グループにはもうひとつ、「月曜会」という組織もある。二木会とともに「新年互礼会」などに参加する団体で、参加資格はグループ企業の常務以上。現在は78社が名を連ねている。その歴史は二木会より1年ほど長く、三井系企業首脳部の連絡会議として発足した。名前は発足日が月曜日だったことに由来し、現在も主に月曜日に会合を開いている。
その歴史は400年以上、住友グループ 「白水会」
世界最古の財閥の流れをくむ同グループのトップ組織が「白水会」である。住友財閥の直系と準直系をはじめ、分離した企業も含む住友グループの中核会社の社長によって、構成される社長会だ。トップ組織は3つのグループの中で、最も長い歴史を持っている。
住友財閥自体の歴史は400年以上あり、有名なロスチャイルド財閥をおさえ、世界最古である。「白水会」は住友家の商号である「泉屋」の字を上下に分けて、「白水」と名付けられている。
現在17社が加盟しており、住友商事 <8053> 、住友化学 <4005> などのほか、日本板硝子 <5202> やNEC <6701> も加盟している。ほかの2会より会員企業が少なく、少数精鋭のため、その結束力は高く維持されているようだ。それを象徴するのが、「血判状」と呼ばれている誓約書の存在である。住友精神の順守などが定められた書類に押印しなければ、白水会への出席は認められないという。2012年には、この書類に判を押さなかった住友金属工業が白水会を去る事態も起きている。
三井住友銀行、三井住友海上火災保険などは三井系と住友系の企業が合併しているだけに、どちらに属しているのかと思う方もいるだろう。この2社は二木会と白水会の両方に加盟している。どちらかに絞らなければいけない、というわけではないようだ。
これらの組織は、日本経済に大きな影響を与えるにもかかわらず、活動の実態はあまり知られていない。人の三井、組織の三菱、結束の住友という企業風土は、トップ組織が牽引して脈々と受け継がれてきた文化である。それぞれのグループには、赤字企業や経営危機を迎える企業があるが、影響が大きいだけに今後、どのような救済策が取られるか目が離せない。
文・ZUU online 編集部
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