新型ROVの性能をテスト
研究チームは2021年に太平洋での30日間の航海を行い、その中で新型ROVを使い深海200〜1000メートルの探査テストを実施しました。
期間中に61匹の深海生物を撮影し、そのうちロボットアームから逃げなかった32匹のキャッチ&リリースに成功しています。
そしてチームは種の異なる4匹の深海生物を対象に、撮影〜DNA分析までを含めた包括的なテストを行いました。
対象としたのは以下の4匹で、左上から時計回りに、オヨギゴカイ属の一種(学名:Tomopteris polychaete)、ヒノオビクラゲ属の一種である(学名:Marrus claudanielis)、クダクラゲ目の一種(学名:Erenna sp)、そして樽型の尾索動物であるサルパの一種です。

結果、4種ともに高解像度での撮影からロボットアームでの捕捉、DNA採取までを問題なく完遂できました。
加えて、採取したDNAサンプルの分析から、4種の種の特定もスムーズに行うことにも成功しています。
研究に参加したニューヨーク市立大学(CUNY)の海洋生物学者であるデヴィッド・グルーバー(David Gruber)氏は、この新型ROVについて「私たちが存在すら知らなかった深海生物から、わずか数分で信じられないほど多くの情報を得ることができる ことを証明した」と話しています。

チームは次なるステップとして、(先に述べたように)ロボットアームのデザインを改良し、捕捉した生物を殺さずにDNA情報を入手できるような技術を開発したいと述べています。
この新たなテクノロジーは深海生物の発見を大幅に促進するとともに、種の保護や海洋管理に役立つ情報を提供できると期待されています。
こちらはオヨギゴカイを撮影したときの映像です。
参考文献
New undersea robot digitally captures the sea’s most delicate life
New Approach Enables Deep-Sea Research on Fragile Animals
URI professor leads effort demonstrating success of new technology in conducting deep-sea research on fragile organisms
元論文
An in situ digital synthesis strategy for the discovery and description of ocean life
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。