ラッキーアイテムは、できるという感覚を高め、パフォーマンスを上げる

実験の結果、親指を巻き込んで握る動作がただのジェスチャーであると知った人と比較して、「幸運」に関連する迷信的な意味合いがあると知った人は課題のやり遂げるまでの時間が短くなりました。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Damish et al., (2010).

この結果は、課題の前に全く同じ動作を行ったとしても、その行動に迷信的な意味合いを感じているかどうかで、次に行うパフォーマンスが向上する可能性を示唆しています。

ではなぜこれらのラッキーアイテムや迷信的行動はパフォーマンスを高めるのでしょうか。

研究チームは迷信がパフォーマンスを高めるこの現象は、自己効力感が関係しているのではないかと考えました。

自己効力感とは、簡単に言うと「自信」のことで、ある課題をこなすにあたって、自分が適切な行動を選択し遂行する能力があると認識することです。

彼らは、大学生42名に自分が持っているラッキー・アイテムを実験室に持参してもらいました。

ここでのラッキー・アイテムは普段から幸運のお守りとして持ち歩いてる指輪や、大切な人からもらったペンダントなど、自分が持っている時に良いことがあると感じる物でした。

まず実験者は撮影する目的で一度それらをを回収し、返却のタイミングに違いを設け、参加者を以下の2つのグループに分けています。

ラッキー・アイテムあり群:次の課題実施前にラッキー・アイテムを返却し、課題に取り組むときには手元にある

ラッキー・アイテムなし群:次の課題実施後にラッキー・アイテムを返却し、課題に取り組むときには手元にない

実験室に持参したラッキー・アイテム
実験室に持参したラッキー・アイテム / Credit: Damish et al., (2010).

そして次に行う記憶課題にどれだけ自信があるか、またどれくらい不安かを尋ね、ラッキーアイテムの有無で成績がどう変わるかを比較しています。

実験の結果、ラッキー・アイテムを課題遂行時に持っていた人の方が、持っていなかった人と比較して、自己効力感が高く、記憶課題の成績が優れていることが分かりました。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Damish et al., (2010).

しかし不安に関してはラッキー・アイテムの有無で変わりませんでした。

つまり、ラッキー・アイテムが課題のパフォーマンスの向上は、自分自身に対する自信が高めるからだと考えられます。

個人的な意味のあるぬいぐるみを持つ、お参りに行くなどの行動は、科学的に考えれば、不合理的で、何の意味も成さないと思ってしまいがちです。

しかしお守りやジンクスは、「自分はできる」という自信を高め、パフォーマンスを向上させる可能性を秘めているのです。

受験シーズンでは特にお守りやジンクスを気にする人は多いかもしれませんが、それはちゃんとあなたの役に立つものになるかもしれません。

ぜひ今回の記事を読んだのを機会に自分なりのラッキー・アイテムやジンクスを作ってみてください。

参考文献

Keep your fingers crossed: How superstition improves performance

Very Superstitious

元論文

Keep your fingers crossed! How superstition improves performance.

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。