植物のように環境に合わせながら成長していくロボットを開発

植物の屈性を模倣したロボット「フィロボット」
植物の屈性を模倣したロボット「フィロボット」 / Credit:Emanuela Del Dottore(IIT)et al., Science Robotics(2024)

研究チームが開発したロボット「フィロボット(FiloBot)」は、植物からインスピレーションを受けた自律成長ロボットです。

全体像を見ると、ミミズもしくはヘビのような見た目ですが、重要な要素が詰まっているのは、円錐型の頭部です。

この頭部には3Dプリンタような仕組みが内蔵されていて、絶えず胴体部分を生成しています。そして光センサーや重力センサーも内蔵されており、植物のように光、影、重力などの外部刺激を受け取って進むべき方向を決定します。

事前にプログラムされた動きをしたり、計画済みの経路で進んだりするのではなく、環境に合わせて自律的に進行方向を決定していくのです。

植物のように、光・影・重力に反応して進行方向を決定する
植物のように、光・影・重力に反応して進行方向を決定する / Credit:Emanuela Del Dottore(IIT)et al., Science Robotics(2024)

例えば、つる植物のように、木が作る日陰を認識して、その木に向かって伸びていきます。

また、その木に巻き付きながら、光で明るく、重力方向とは逆の方向へ伸びていくことができます。

そしてフィロボットは、移動する方法さえも植物に似ています。

フィロボットの頭部では、筒状の胴体を一層ずつ生成することができ、進行方向に向かって毎分約7mmという非常にゆっくりとした速度で成長していくのです。

頭部が一層ずつ体を形成し、進行方向へ伸びていく
頭部が一層ずつ体を形成し、進行方向へ伸びていく / Credit:Emanuela Del Dottore(IIT)et al., Science Robotics(2024)

生成された胴体はその場に残るので、頭部は絶えず「移動」するものの、全体としては「成長」や「伸びる」といった表現が適切かもしれませんね。

そしてフィロボットは環境に合わせて成長していくため、複雑な地形でも活用でき、しかも「環境を破壊しない」というメリットを持っています。

さらにフィロボットには、複雑なプログラムや機能は搭載されておらず、事前に地形図を読み込ませる必要もありません。

こうした特徴から研究チームは、変化しやすい環境や危険地域における監視・救援活動、未知の環境におけるルート開拓・インフラ構築に役立つ可能性があると考えています。

「つる植物のようなロボットが、自分の体をあらゆる場所に張り巡らしていく」

もしかしたら、そんなSFチックな将来もありえるのかもしれませんね。

参考文献

Watch a plant-inspired robot grow towards light like a vine

元論文

A growing soft robot with climbing plant–inspired adaptive behaviors for navigation in unstructured environments

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。