2011年にイスラエルで創業されたBioCatch社は、行動的生体AI認証技術を用いたセキュリティを提供する企業だ。行動パターンから個人を識別する同名の技術・製品で、世界有数の金融機関や通信ブランドを多数顧客に持つ。

テルアビブを含め世界8都市に拠点を構えるまでに成長した同社が、2023年11月にケンタウロス企業のステータスを獲得した。パンデミックに乗じたBOT攻撃の急増など世界的にサイバー犯罪の脅威が拡大するなか、急速な成長を続けている。

スマホの操作やタイピングで個人を識別?「行動生体計測」で犯罪防止

歩き方から個人を識別する「歩容認証」について、映画やドラマで見た覚えのある方も多いのではないだろうか。BioCatchの技術はそれに近く、マウスの動き方やスマートフォンの操作、キーボードのタイピングスタイルなどの行動的属性からユーザー固有の行動パターンや癖を分析・識別するというものだ。また、端末へのインタラクティブ傾向や長期記憶・短期記憶による操作傾向といった認知的属性のパラメータも収集。ユーザー本人であれば長期記憶を用いるはずの個人情報入力などの場面で短期記憶による操作が行われれば、それを識別することができる。

こうして異常な行動パターンを検知するとアラートを出し、なりすましやアカウント乗っ取りなどのサイバー犯罪やマネーロンダリングを未然に防ぐことができるのだ。

特に、サイバー犯罪のターゲットになりやすいのは日本の特殊詐欺と同じく高齢者。60歳以上のユーザーを犯罪から守るため、2021年10月には口座保護機能「Age Analysis」をローンチし、年齢分析による詐欺防止ソリューションを実現した。YouTubeの公式チャンネルでは、BioCatchがいかにして老人を守るのか、ドラマ仕立てのPR動画を視聴できる。
同社は2019年の時点で150%の成長を達成し、すでに40以上の大手金融機関にサービスを提供していた。ベインキャピタル社の主導したシリーズCラウンドでは1億4,500万ドルを調達している。このラウンドに参加していたのはOurCrowd、American Express Ventures、CreditEaseなど米国およびイスラエルの投資家。2023年11月に、年間経常収益(ARR)が前年度比51%増となって1億ドルを超え、いわゆる「ケンタウロスステータス」を獲得した。日本ではSCSKが2021年に米BioCatchと国内総代理契約を締結し販売している。