雇用形態、性別の関係で一概に東京が一番とは断定できない
ではAさん、Bさんの例を踏まえると、やはり地方から都市、とりわけ東京に引っ越したほうが賃金は上がりやすいといえるのか。
「たしかに東京に引っ越して生涯収入の高い企業に就職したほうが、地方在住時よりも賃金が上がる可能性は高いかもしれません。ですが、AさんとBさんはどちらも雇用形態は『正社員』、性別は『男性』という共通点があるのを忘れてはいけません。これが『非正規雇用』『女性』と条件が変わるだけで多くの人は、収入が大きく変化してしまいます。
日本の正社員は『メンバーシップ型雇用』という終身雇用、年功序列型の雇用形態が主流であり、年齢や勤続年数を重ねるごとに賃金も上がっていく仕組みがいまだに根強い。ところが非正規雇用ですと、正社員並みの賃金上昇は見込めず、生涯収入では正社員に必ず負けてしまう。たとえば、Bさんを非正規雇用と想定した場合、一定の年齢までは地方にいるAさんより年収が高いかもしれない。それはあくまで一時的なもの。年齢を重ねるにつれてAさんに抜かれてしまう可能性が高いですし、おのずとBさんよりAさんの生涯収入のほうが高くなるでしょう。
加えて、日本は先進国のなかでも稀に見るレベルで男女格差が大きい国です。労働政策研究・研修機構が公表している『ユースフル労働統計2023』の、学校卒業後フルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金に関するデータでは、高卒、大学卒の男性・女性間で、それぞれ5000万円も生涯でもらえる収入に差があるという結果になっています。
さらに女性は男性に比べて管理職に就きにくい『垂直分離』、保育士、介護士など給与が低い仕事に就きやすい『水平分離』という現象にも悩まされています。そして地方では、いまだにジェンダーギャップが根強い地域もあり、賃金の高い女性の働き口自体が少ないという問題もあります。ですから仮にBさんが女性だったとしたら、生涯収入で地方在住で男性のAさんに負けてしまうのです」(同)
いずれにしても、モレッティ氏が唱える「学歴は問わず、経済が活発な都市に住むほうが高い報酬を得られる」という説は、日本でも的を射ているケースが多いようだ。
(取材・文=逢ヶ瀬十吾・文月/A4studio、協力=白河桃子/昭和女子大学客員教授・ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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