時代の寵児だったイーロンマスク氏

お前はイーロンマスク氏を過去形扱いにするのか、と怒られそうですが、バッサリ「過去形」と申し上げます。彼の才能は素晴らしかったと思います。PayPal、テスラにスペースXを含め、アメリカのみならず世界を巻き込んだ賛否両論の中、「世論、我関せず」を貫き、自分の信念に基づいたライフと言動を展開してきました。旧ツィッター買収の際には「勧めないけどやるなら彼は解体的出直しをする」と申し上げましたが、その通りになりました。マスク氏の性格は読めるのです。自分の色に染めないと気が済まないのです。

マスク氏がテスラの経営にどれぐらい興味を持っているのか、私は懐疑的になってきています。彼はEVで圧倒的立ち位置に立つこと目指していただけでテスラ車を儲かる会社にしたかったとは思えないのです。故に会社としての組織が大きくなった今、マスク氏の自由が利かなくなってきた、なので引き続き経営指導はするけれど実務は任せて本人は違うことに執心し始めているとみています。日経ビジネスが先週、「データ解析 テスラ 異次元イノベーション」という特集を組んでいますが、テスラ社がマスク氏と離れてもそのコンセプトを引き継いでいればそれでよいのではないでしょうか?

彼は天才肌であり、想像力と着眼点は圧倒しています。ですが、このところの彼はパッションが落ちた気がするのです。一番すごかったのはテスラの工場の立ち上げの頃で工場に泊まり込み、寝る間を惜しんで仕事をしていました。やらされ感というより爆発的な情熱だったと思います。が、今、世界でトップの富豪となり、ハングリーさを維持せよ、と言っても難しいはずです。言い換えると人はマネーと社会的地位を得ると実務能力が落ちることを証明しつつあると言えましょう。ここから先はテスラとマスク氏は別物として考えた方がよいと思います。

後記 バンクーバーの風物詩、Dine Out というイベントが開催中です。350のレストランが開催期間中の2週間、特別価格でコース料理を提供するというものですが、このコース料理、昔は35㌦ぐらいで3品コースでしたが今では55㌦とか65㌦なので飲み物とチップ、税金を入れると軽く一人100㌦(1万円)を超えます。正直、1万円払うならモチベーションは上がりません。日本で1万円ならすごい料理が食べられるのですがねぇ。そもそもグルメ度が日本とは雲泥の差のカナダではあきらめの境地です。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月27日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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