そのような中、ショルツ首相のSPDの支持率は13%と急落し、14%の「緑の党」にも抜かれて与党第2党の地位に甘んじていることが明らかになったのだ。そしてベルリンから突然、「ショルツ首相は退陣、後継者にピストリウス国防相」といった情報が流れてきた。ドイツやオーストリアのメディアは一斉に大きく報じた。
オーストリアの日刊紙クリアは26日、4面国際面の1ページを使い、「ショルツ自身の変わる時」という見出しを付け、「ドイツの政権でショルツ首相ほど愛されない首相はいない」と報じ、SPD内でも首相の交代を求めるが流れている、「ドイツ国民の64%が首相の交代を願い、その後継者にピストリウス国防相の名前を挙げている」というのだ。ただし、国防相が首相になったとしても、SPDは3%しか支持率を伸ばせないだろうという。肝心の後継者と名指された国防相自身「首相になる考えはない」と噂を否定している。
ショルツ首相が先日、ベルリンで開催中のハンドボール欧州選手権を応援するために会場に入ると、ブーイングの声が上がり、罵声が飛んできたという。首相の行く先々で歓迎ではなく、批判の声が飛び交うのだ。クリア紙は「首相は侮辱されても行動せず、座って、良くなることを希望して待っている。典型的なショルツ氏の反応だ」と論じている。SPD関係者も「首相は語らなければならない時、沈黙し、動かなければならない時、固まって動かない」と受け取っている。
首相への批判はどの政権でもあった。メルケル政権時代、移民・難民が殺到した時(2015、16年)、「メルケル、出ていけ」という声が聞かれたし、シュレーダー氏も首相時代(1998年~2005年)にSPD系労働組合から罵声を受けた。しかし、ショルツ首相は政権を担当してまだ2年だ。16年間の首相の座にいたメルケル前首相や7年間のシュレーダー氏とは比較できない。
今年はドイツでは6月に欧州議会選を控え、秋には旧東独の3州(ザクセン州、チューリンゲン州、ブランデンブルク州)で州議会選が待っている。「首相を変えるのならば今しかない」といった危機感がSPD関係者内にあるのかもしれない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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