ハンバーガーチェーン「バーガーキング」が積極的な出店攻勢に乗り出したとして話題を呼んでいる。1、2月だけで8店舗を新たに出店し、今年は積極的に出店していく方針を表明。今月19日には公式X(旧Twitter)上に「店舗を増やしたいのですが、物件探しに困っています。バーガーキングにぴったりの空き物件をぜひ紹介してください。実際に成約した場合には10万円差し上げます!」と投稿し話題を呼んだ。これまで価格が割高という印象が強かったバーガーキングだが、業界トップのマクドナルドが相次ぎ値上げを行ったことで両チェーンの価格差が縮まるなか、ここにきてバーガーキングが出店攻勢を展開している狙いとは何か。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
ボリューミーかつジューシーで食べ応えのあるパティをウリに根強いファンを獲得しているバーガーキング。今月12日からは通常価格530円の「ベーコンチーズワッパーJr.」と「クアトロチーズワッパー Jr.」について、2個で600円の新春初売りキャンペーン「初売チーズバーガーズ」を実施(各1個ずつの組み合わせも可)。積み上げ価格ベースで460円、約4割の値引きキャンペーンを展開した。
これまで「ボリューミーだが価格が割高」というイメージが強かったバーガーキングだが、競合最大手のマクドナルドが相次いで値上げを実施することより、価格差は徐々に縮小。以下のように一部の類似商品ではバーガーキングのほうが価格が下回るという「逆転現象」も起きている。
マクドナルド バーガーキング
ダブルチーズバーガー:430円 ダブルチーズバーガー:460円
てりやきマックバーガー:400円 スモーキーテリヤキバーガー:350円
フィレオフィッシュ:400円 フィッシュバーガー:400円
また、平日・土日問わず提供しているバーガー・ワッパー類+フレンチフライ(M)+ドリンク(M)のセット「オールデイ・キング」も見逃せない。マクドナルドのバーガー類+マックフライポテト(M)+ドリンク(M)のセット「ひるまック」と比較すると以下のようになり、価格差はほぼなく、バーガーキングのほうが安いものもある。
マクドナルド バーガーキング
ひるまック てりやきマックバーガー セット:600円 スモーキーテリヤキバーガーセット:550円
スパチキ(スパイシーマックチキン) セット:520円 スパイシーチキンバーガーセット:550円
ひるまック フィレオフィッシュ セット:600円 フィッシュバーガーセット:600円
「バーガーキングを代表するメニューはワッパー類であり、例えば『ワッパー』単品は590円といったように割高。一方、割安なバーガー類も揃えており、『チーズバーガー』単品は280円。なのでバーガーキングは割高な商品も一般的なバーガーチェーンと同レベルの価格帯の商品も両方を扱っているという表現が正しい。
頻繁に大幅な値下げキャンペーンを行っており、それを使えばオトクに利用することができるが、キャンペーンでまずは多くの人に店に足を運んでもらい、『こんなメニューもあるんだ』という認知を広めてリピーター客を増やしていく戦略だとみられる。特にバーガーキングは『アメリカン スモーキーチキン4ピース』や『チーズイン チキンナゲット』『チリチーズフライ』『オニオンリング』など特徴的なサイドメニューも強みなので、こうした商品にも手を伸ばす客を獲得したいところだろう」(外食チェーン関係者)
店舗数はマクドナルドの約14分の1
そんなバーガーキングは、実はここ数年、積極的な出店を続けている。運営元のビーケージャパンホールディングスは2023年7月14日付け当サイト記事でBusiness Journalの取材に対し、
<バーガーキングの国内店舗数は約4年間で114店舗増加、合計191店舗(※2023年7月5日時点)に拡大してきました。今後2025年に全国300店舗を目指し、引き続き積極的な新規出店を継続してまいります>
と明かしていた。そして今月には前述のとおり出店可能な空き物件の紹介を呼びかけるXでのポストを行い、以下のように多数の声が寄せられている。
<是非大分に作ってほしい 駅ビルや周辺が空き店舗多いから是非ほしい>
<北海道にもっと増やして欲しいですね〜近くには一店舗しか見た事ないです>
<石川県金沢のイオン系列、香林坊〜片町のテナント>
<家の近所にバーキンを誘致出来るチャンスかも!どこかなかったかな?探してみよ>
<ジョイナステラス二俣川2 3階のノジマ横にある空きテナントとかどうです?>
<札幌市西区琴似JR駅からすぐ近くの元サイゼリヤが入っていたテナントずーっと空いてます>
<スーパーセンターマルナカ徳島店内のイルローザ跡地、イオンモール徳島3階フードコート(2区画あり)は出店場所としてどうでしょうか?>
<埼玉 イオンモール上尾店 2Fイートインでマクドナルドの隣が空いてます>
外食チェーン関係者はいう。
「現在、バーガーキングの店舗数はマクドナルドの約14分の1であり、その差は大きく、頑張って今の7倍に増やしても、やっとマクドナルドの半分というレベル。マクドナルドは圧倒的なスケールメリットを発揮することで低価格でも多額の利益を維持できる仕組みをつくり上げており、あらゆる条件面でバーガーキングが不利なのはいうまでもないし、マクドナルドと同じ方向性の戦略をとっても勝ち目はない。バーガーキングの店舗がない地方の人が東京に出てきて初めてバーガーキングの味を知って感動したというエピソードがしばしばネタになるほど、とにかく『近くに店舗がなくてアクセスできない』というのが最大のネック。この劣後点を一気に解消することは難しいものの、他のファストフードチェーンでは出会えない特徴的なメニューを武器にバーガーキングの独自のポジションを確立することができれば、持続的な成長を果たすことができるのでは。
いずれにしても、このタイミングでマクドナルドとの価格差が縮小し、バーガーキングの価値が再評価されつつあるのは、バーガーキングにとっては大きな追い風。この追い風と積極出店の相乗効果が生まれることに期待したい」
当サイトは1月13日付記事『マクドナルド、2年で3割も値上がり…モスやバーガーキングのほうが安い現象』でバーガーキングの動向について報じていたが、以下に改めて再掲載する。
――以下、再掲載――
日本マクドナルドは一部メニューの店頭価格を10円から30円値上げすると発表した。マクドナルドの値上げは過去2年で5度目。その間、都心店では「ビッグマック」が約3割も値上げされるなど(都心店の現行価格500円)、急ピッチかつ大幅な値上げが進行している。そのため、マクドナルドより高い価格帯とされてきたモスバーガーやバーガーキングとの価格差は縮小し、一部の類似商品ではモスやバーガーキングのほうが安くなる現象が発生し、話題を呼んでいる。
原材料価格・エネルギーコストの上昇を受け外食業界で値上げが続くなか、マクドナルドは2022年3月と9月、昨年1月と7月に値上げを実施。昨年7月の価格改定では「通常店」「準都心店」「都心店」で異なる価格設定がなされたことも注目された。今回の値上げの対象になるメニューは全体の約3分の1で、新価格の適用は今月24日から開始。主なメニューの値上げ幅は次の通り(以下、税込み。都心部の店舗などでは価格は異なる)
・てりやきマックバーガー:370円→400円
・フィレオフィッシュ:370円→400円
・チキンフィレオ:380円→410円
・ダブルチーズバーガー:400円→430円
・えびフィレオ:400円→430円
・エッグマックマフィン:240円→260円
・ソーセージエッグマフィン:290円→320円
・マックグリドル ソーセージ:230円→250円
・チキンマックナゲット5ピース:240円→260円
・チキンマックナゲット15ピース:710円→740円
・炭酸ドリンク Lサイズ:270円→290円
・カフェラテ(ホット・アイス)Sサイズ:190円→210円、Mサイズ:250円→280円
一方、「ハンバーガー」「チーズバーガー」「マックフライポテト」の価格は据え置かれるが、外食チェーン関係者はいう。
「1回あたりの価格改定の値上げ幅は数十円単位なのでインパクトが和らげられているが、一昔前と比べると『だいぶ高くなった』という印象。特にファンが多い『てりやきマックバーガー』『フィレオフィッシュ』『チキンフィレオ』が軒並み400円台に乗ったインパクトは大きい。今回の価格改定で巧妙だと感じるのは、昼マックの単品価格を引き上げた一方でバリューセットの価格は据え置いている点。ドリンク類は原価率が低く『儲かる商品』なので、ドリンク類が付いたバリューセットの購入を促す意図があるのだろう。また、学生などの若者層の客はグループで来店して『ポテナゲ』をシェアしたり期間限定のスイーツを食べて、ハンバーガー類を注文しない傾向もあるが、『ポテナゲ』の価格は据え置いている。一方、固定ファンがついているため多少高くなっても売れる『てりやきマックバーガー』『フィレオフィッシュ』『ビッグマック』は値上げされており、全体的にかなり客の購入動向に目配せした価格改定になっている」