年始のとあるテレビ番組での「フナ」の取り扱われ方に、識者から不満が相次いでいます。一体なにがあったのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

テレビ番組でのフナ(鮒)の扱いに不満続出 「フナが不味い」は誤解?

某テレビ番組での「フナ」の扱いに不満続出

年末年始は様々な特番が放送され視聴者の目を集めますが、その中のとある番組が魚好きの反感を集めたことが、先日よりちょっとした話題になっています。

その番組は「本物と偽物をちゃんと見分ける力があるか」をテーマとし、様々な芸能人が提示されたものを比較して本物である方を当てるという内容のものなのですが、その中での「フナ」の扱い方が火種となりました。

テレビ番組でのフナ(鮒)の扱いに不満続出 「フナが不味い」は誤解?フナ(提供:PhotoAC)

問題となったのは「どれが本物のタイの寿司か」を当てさせる問題。タイとの比較用に「フナの寿司」が出され、そちらを本物と思ってしまった芸能人が「絶対ありえへん」という評価を受ける、という流れだったのですが、それに対して「フナをけなすな!」というクレームが相次いだのです。

番組側が用意した「フナの写真」が、実際には「コイの写真」であったことも、不満に拍車をかけることになりました。

実は美味しいフナ

なぜフナの寿司の扱いにクレームが相次いだのか、それはそもそもフナが「タイに負けず劣らず美味な魚」だから。

各地でフナは食用にされており、地域によっては大変人気のある魚です。とくに山陰地方や北陸地方では「寒の時期のフナ」は大変なごちそうで、タイと同じように生食されることも多いです。

テレビ番組でのフナ(鮒)の扱いに不満続出 「フナが不味い」は誤解?フナの刺身(提供:PhotoAC)

筆者も何度か食べていますが、活けのフナの刺身は強い弾力と旨味があり、噛みしめるとシコシコとした食感の中に上品な脂がにじみ、大変な美味です。タイと比べると小骨が多いので、魚を食べ慣れていれば間違えることはありませんが、それでも同じくらい美味しいものであると言って過言ではありません。

誤解の元はJ-POP?

しかし実際のところ、全国的にはフナに「美味しい魚」というイメージはありません。それどころかゲテモノ扱い、あるいは食べ物としては見れないという人も多いかもしれません。

そういう人にフナのイメージを聞くと「生臭い」「泥臭い」といった答えが返ってきますが、その元ネタは平成時代に流行ったとあるJ-POPである可能性があります。その歌の中で「フナは生じゃ食えない 泥臭い 生臭い」といったような下りがあり、それがフナの悪いイメージの形成に大きく貢献してしまったというのはあるでしょう。

テレビ番組でのフナ(鮒)の扱いに不満続出 「フナが不味い」は誤解?鮒ずし(提供:PhotoAC)

あるいは、滋賀県の伝統的発酵食品である「鮒ずし」の影響もあるかもしれません。鮒ずしには強い発酵臭と独特の風味があり、食べる人を選ぶことが知られています。ただしこの風味は発酵によるものであり、新鮮なフナにはそのような風味や、また生臭さ、泥臭さもありません。

悪いイメージをお持ちの人ほど、本場のフナを食べた際にその美味しさに驚かされるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>