自閉症の人は人間に偏った見方をしていない

自閉症の人は人間に偏った見方をしていない
Credit:Canva

なぜ自閉症の人は、擬人化された存在に常人より強く共感できるのか?

研究者たちは答えの1つに、普通の人間の脳は、生身の人間の感情を認識することに特化している可能性をあげています。

特化により普通の人は、他人のわずかな目線や表情の変化から感情やその場の空気を読み、適切な対応をとれるという「恩恵」に預かることができます。

しかし特化の代償として、人間ではない擬人化した存在の感情については、正しく認識することが困難になってしまいました。

(※アニメやマンガのキャラは人間を模して描かれていますが、巨大な目や口、異常な頭身など、現実の人間の姿とは本質的に大きく異なっており、擬人化した存在として本物の人間とは別に認識されています)

一方自閉症の人はそのような特化が起こっていないため、生身の人間の感情を読む際の恩恵がない代わりに、人間でない擬人化した存在の感情を読み際の代償も特にないのだと考えられます。

もう1つの可能性は、自閉症の人は擬人化した存在に対する興味が高く、擬人化した存在に対して敏感になるように自己訓練が行われてきた、というものです。

擬人化した存在が描かれている物語では、ストーリー構成や演出などによって、擬人化した存在に感情移入できるように仕上げられています。

一方、現実世界の人間にそのような劇的な場面が訪れることは非常にまれです。

また自閉症の人はもともと、興味を傾ける対象や動機を感じる行為が非常に限られていることが知られています。

そのため研究者たちは、自閉症や自閉症の特徴が濃い人は、限られた興味や動機が生身の人間より擬人化された存在とのかかわりあいのほうに注がれており、最終的に普通の人の感情認識能力を追い抜いた可能性があると述べています。

(注意:アニメやマンガが好きだと自閉症になるわけではありません。自閉症としての特徴がアニメやマンガのキャラに対する親和性を増加させているだけであり、その逆ではありません)

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同様の自閉症の人が人間以外の存在とのかかわりあいを楽しんでいるとする報告は他の研究でも報告されています。

研究者たちは今後VR技術など、擬人化された存在(アニメやマンガのキャラ)を利用することで、自閉症の人々が社会的関係を築ける仕組みを開発していくべきだと結論しています。

参考文献
Autistic people outperform neurotypicals in a cartoon version of an emotion recognition task

元論文
Autistic people outperform neurotypicals in a cartoon version of the Reading the Mind in the Eyes

提供元・ナゾロジー

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