CGモンスターの画像を見慣れた人たちでも、トップ画像が現実の生き物の写真と言われたら驚くかもしれません。

このほど、「ニコン・スモールワールド・顕微鏡写真コンテスト2022(Nikon’s Small World Photomicrography Competition 2022)」の優秀作品が決定し、”ミクロの世界の美しさ”を体現する数多くの写真が発表されました。

しかしそんな中、優秀作品TOP20にランクインしなかったある一枚が、大きな反響を呼んでいます。

それが、アリの顔のクローズアップ写真で、SNSを中心に「まるでホラー映画から飛び出してきたかのようだ」と話題をかっさらっているのです。

本当は怖いアリの顔面、「悪魔の目」に見えるものの正体とは?

光学機器メーカーNikonが主催する同コンテストは、今年で48回目を迎え、72カ国から約1300点の応募が寄せられました。

コンテストには、科学者やアーティスト、写真愛好家など、幅広い分野からエントリーがあり、「最も美しいミクロの世界を垣間見たのはだれか」を競い合います。

それに対し、4人の審査員が、独創性・情報量・技術力・視覚的インパクトの観点から、厳正な審査を行い、優秀作品を決定しました。

しかし意外にも、人々の関心を引いたのは、TOP20にランクインしなかったこの一枚でした。

アリの顔のクローズアップ写真
Credit: Nikon’s Small World Photomicrography Competition 2022

これは、リトアニアの写真家、オイゲニウス・カヴァリアウスカス(Eugenijus Kavaliauskas)氏が撮影した、オオアリ属 (Camponotus)の顔のドアップ写真です。

氏によると、このアリは、リトアニア中西部の都市タウラゲ(Tauragė)にある自宅近くの森で捕まえた、ごく普通のオオアリだそうで、別に悪魔に取り憑かれているわけではありません。

氏は、アリを自宅に持ち帰り、顕微鏡下で5倍に拡大したアリの顔を撮影しました。

特徴的な赤い目が、さも悪魔を思わせるようですが、実はこれは目ではなく、触覚の付け根です。

本当の目は触覚の後ろに位置してあり、もう少し引きで見ると、このようにいつものアリの顔が浮かび上がります。

カヴァリアウスカス氏は「写真のアリはかなり恐ろしく見えますが、もちろん、実際の自然界にそれほどの恐怖はありません」と話します。

「私も顕微鏡写真を始めた当初は、あらゆる昆虫が少し怪物じみて見えました。

今ではすっかり慣れて、むしろ私たちの足元にこんなに面白く、美しい、未知の世界が広がっていることにとても驚いています」

しかし、この写真は予想以上に人々に恐怖のインパクトを与えたようで、アメリカのホラー映画監督であるレベッカ・マッケンドリー(Rebekah McKendry)氏も、自身のTwitterにて写真に言及しました。

氏は「ホラー映画から取ってきた画像でしょうか? いいえ、これはアリの真の素顔なのです。アリですよ。さあ、一晩中考えずにはいられなくなるでしょう」と述べています。

ハロウィンが近いこともあり、アリの写真の注目度は異様に高いですが、他にも素晴らしい写真の数々が発表されているので、そちらも見ておきましょう。