『バービー』のノミネーション結果について、専門家は次のように分析している。

カルチャーコラムニストのカイル・ブキャナン氏はニューヨークタイムズの記事で、フランスの女性監督ジュスティーヌ・トリエ氏の作品『落下の解剖学』(Anatomy of a Fall)が監督賞のノミネートを獲得していることから、『バービー』の監督賞の除外は、性差別の問題とは言い難いと指摘。コメディ作品は「オスカーで賞を獲得するのに苦労する」傾向があることに加え、女性を主役に起用したコメディについても「乗り越えるべき、さらなるハードルがある」と見解を述べた。

監督部門は587人の投票者によって候補作が決定されるという。ブキャナン氏は、投票者のうち女性はわずか4分の1で、「高尚な」グループの人々は、「メインストリームのスタジオ作品を拒否する可能性が非常に高い」とも主張。93か国の会員が投票に参加するなど「国際化」が進んだことも理由の一つだろうと加えた。

一方、文化評論家のアニ・ブンデル氏は、『バービー』と『オッペンハイマー』は共に、男女それぞれのバリューを描いた作品だとし、「女性が価値があると考えていることは、必ずしも重要だとみなされないことを地味に思い出させてくれる」と性差別の可能性を指摘した。「われわれがどれほど前進したとしても、ゴールラインは移動しており、常に2位を与えられる」とも述べた。

「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーの伝記映画『オッペンハイマー』は、作品賞や監督賞、主演男優賞など最多13部門でノミネートされた。

NBCニュースによると、過去に主演男優賞や主演女優賞、監督賞のノミネートを逃した作品で、作品賞を受賞した例は「ほとんどない」という。『バービー』は、そんなジンクスを打ち破ることになるのだろうか。アカデミー賞授賞式は、現地時間の3月10日(日本時間11日)に開催される。