アメリカに生息する絶滅危惧種のヘビ「タンティラ・オリティカ(学名:Tantilla oolitica)」が、奇妙な姿で発見されました。
このヘビは発見されたとき既に死んでいましたが、なんと巨大なムカデが口から突き出た状態だったのです。
獲物のムカデを飲み込んでいる最中に死んでしまったと考えられます。
アメリカ・フロリダ自然史博物館(FLMNH)の研究員ジミー・グレイ氏ら研究チームは、死因を調査するため、CTスキャンを利用して精密な3Dモデルをつくりました。
一般的に自分より大きな獲物を平然と丸呑みすることで知られているヘビですが、どうして今回は、飲み込めずに死んでしまったのでしょうか?
研究の詳細は、2022年9月4日付の科学誌『The Scientific Naturalist』に掲載されています。
絶滅危惧種のヘビが巨大ムカデを食べて窒息死する
「リムロッククラウンスネーク(Rim rock crown snake)」とも呼ばれる「タンティラ・オリティカ」は、比較的小型のヘビです。
絶滅危惧種であり、4年もの間、専門家たちに姿を見せることすらありませんでした。

ところが最近、フロリダキーズ(フロリダ州にある細長い列島)の公園にて、21cmのタンティラ・オリティカが死んだ状態で発見されました。
しかもその口から、巨大ムカデが2.3cmほど突き出ていたのです。
この繋がった2つの死骸は、死因を解明するために、フロリダ自然史博物館に運ばれることになりました。

ムカデの全長は7.3cmほどであり、体の3分の2がヘビの体内に収まっていました。
しかし一般的にヘビは、自分よりも大きな獲物を飲み込むことで知られています。
どうして今回は、飲み込む途中で力尽きてしまったのでしょうか?
サンプルを傷つけたくなかった研究チームは、CTスキャンと3Dモデルの作成により、解剖せずに内部を調べることにしました。

その結果、ヘビの外部は無傷でしたが、内部に複数の傷が見つかりました。
傷自体は致命傷とはなりえませんが、その傷からムカデの毒が入った可能性があります。
とはいえ、この種のヘビはいくらかの毒耐性をもっていると考えられています。
つまりムカデの毒には、「ヘビが飲み込んでいる最中に死に至らしめる」ほどの力はないのです。

そこでチームが、CTスキャンを使ってさらに詳しく調べたところ、ムカデの最も太い部分がヘビの気管を圧迫していると分かりました。
巨大なムカデを飲み込んでいく途中で、急に息ができなくなったのです。
さらに、ムカデの脚の向きが「返し」のように作用して引っかかり、ムカデを吐き出すこともできなかったと考えられます。
絶滅危惧種のヘビ「タンティラ・オリティカ」の死因は、まさかの「窒息死」でした。
もちろん、ムカデを飲み込む前からヘビが負傷していた可能性もあります。
いずれにせよ、ムカデと戦ううちに弱っていったヘビは、いつものように丸のみすることも、吐き出すこともできず、そのまま窒息してしまったのでしょう。
今回、CTスキャンによって分析できたため、「獲物を食べる途中で死んだタンティラ・オリティカ」のサンプルは無傷のままです。
フロリダ自然史博物館の棚には、この奇妙なサンプルが新たに追加されており、将来の研究のためにも保管される予定です。
参考文献
North America’s rarest snake found biting off more than it could chew Rare Florida snake found dead after choking on a giant centipede元論文
What killed the rarest snake in North America?提供元・ナゾロジー
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