ふるさと納税では、住民税と所得税が控除される。この記事ではふるさと納税と住民税の還付について詳しく解説しよう。
ふるさと納税と住民税
ふるさと納税は返礼品がもらえるうえに、住民税と所得税が控除される。節税もできるのでお得感があるだろう。
●ふるさと納税で住民税の還付を受ける
ふるさと納税では、所得税は確定申告で還付される形になる。住民税は翌年から控除分が差し引かれ、5~6月の住民税決定通知書で控除額を確認することができる。
●住民税決定通知書
住民税決定通知書(特別徴収額の通知書)は、6月ごろに勤務先で渡されることが多い。ふるさと納税の分が還付されているかどうかは、住民税決定通知書を見なければ分からな い。
●住民税決定通知書の見方
住民税決定通知書を普段細かく見ることはあまりないだろう。それどころか見方が分からない人も多いかもしれない。
ふるさと納税で寄付金控除ができているかを確認するには、住民税決定通知書の寄付金控除もしくは税額控除の欄を確認すればよい。通知書の書式は自治体によって異なる。
税額控除額⑤という欄で、2ヵ所の税額控除の合計-約2500円=寄付金額-2000円となっているかが基準となる。確定申告をしている人は所得税の還付額も書いてある。
意外に高い住民税
住民税は概ね10%のところが多い。道府県民税6%と市町村民税4%の合計で10%の所得割と、道府県民税3500円と市町村民税1500円を合わせて5000円の均等割で徴収してい る地域が多い。
●均等割とは
所得割が納税者の所得に応じて徴収する税率であるのに対し、均等割は住民サービスを維持するために、幅広い人に負担してもらうため所得に関係なく、一律同じ金額となっている。自治体の裁量で増減することができる。
●住民税が高い自治体
均等割は自治体の裁量で調整できるので、高い自治体と安い自治体が出てきてしまう。都道府県で最も高いのが宮城県で、年間1200円のみやぎ環境税を設定している。2位以下の岩手県や福島県、三重県も同様に年間1000円の環境税を設定しており、大きな差はない。
また同じ県でも、市町村によって違うことがある。最も高いのは北海道夕張市で、均等割が500円上乗せされて2000円、所得割も0.5%上乗せされており6.5%となっている。
北海道に超過課税はなくても、道民税と市民税合わせて、均等割5500円、所得割10.5%となっている。
次に高いのが、兵庫県豊岡市で、県民緑税の均等割と、市の所得割も0.1%増税されている。次が神奈川県横浜市で、県に水資源環境保全税として300円の均等割があり、所得割も0.025%課せられているほか、市でも横浜みどり税900円の均等割が課せられている。
年収400万円なら、夕張市が年間18万7917円となり、市民税減税条例のある名古屋市(住民税ランキング12位)の17万3628円と比べて、年間1万5000円以上の差がある。
ふるさと納税で住民税を安くできる
ふるさと納税の大きなメリットは、寄付した自治体から特産品をもらえることだが、住民税が控除されることも大きなメリットである。
「寄付金額-2000円」が翌年の住民税から控除される。控除を受けるためには、申請しなけばならない。
●確定申告
ふるさと納税の寄付する自治体が6自治体以上ならば、確定申告が必要となる。
確定申告することで、寄付金控除が受けられ、住民税だけでなく、所得税も控除できる。
所得税は申告後1ヵ月から1ヵ月半後に、指定した口座に振り込まれる。
最近ではe-Taxで、スマートフォンでも申告できるようになった。
●ワンストップ特例制度
2015年4月1日から開始された制度で、寄付先の自治体が5自治体以内で、ふるさと納税ワンストップ特例申請をすれば、確定申告が不要となる。
ただし住民税のみの控除となり、所得税の控除は受けられない。
ワンストップ特例制度の手順
まずは確定申告の対象者であることが前提となる。給与所得者であり、年収2000万円以内であること、副業などで2ヵ所以上から20万円以上の給与を受けていないこと、寄付先の自治体が5自治体以内で、住宅ローン減税や医療費控除など、他の確定申告の予定が無いことなどが条件となる。
寄付を行えば、寄付先の自治体からワンストップ特例申請書が送られてくることが多い。
ワンストップ特例申請書にマイナンバー(個人番号)を記入し、住所名前などの必要事項を記入し、捺印して寄付した自治体に送付する必要がある。
送付の際は、マイナンバーもしくはマイナンバーが記載された通知カードのコピーを一緒に送付する。寄付の都度、自治体に申請書を送らなければならない。
マイナンバーも通知カードもない場合、マイナンバーが記載された住民票と免許証などの身分証明書を送らなければならない。
期限は寄付した翌年の1月10日必着となる。
住民税の仕組み
住民税は複雑である。大体所得の10%くらいだが、地域によって微妙に異なる。
住民税(個人住民税)は都道府県が課税する都道府県民税と市町村が徴収する市町村民税の2つを合算したものである。
●法人住民税と個人住民税
法人住民税は、法人道府県民税と法人市町村民税で構成される。その点は個人住民税と同じである。
大きく違うのは、個人住民税は道府県民税と市町村民税が一緒に記載された納税通知書が送られてくるが、法人住民税は事業年度終了から2ヵ月以内に自ら税額を申告しなけれならないことだ。
●法人住民税の均等割と法人割
法人住民税には赤字・黒字関係なく課税される均等割と法人税額を基準に課税される法人割がある。
普通徴収と特別徴収
住民税には普通徴収と特別徴収がある。ほとんどの人が特別徴収となっている。
●普通徴収
住民自らが住民税を納付することを普通徴収という。給与所得以外の個人事業主や退職して求職中の人、自ら特別徴収から普通徴収に切り替えた人が対象だ。
●特別徴収
企業は特別徴収義務者として地方税法で定められている。従業員も毎月の給与から天引きされることで、特別徴収で住民税を納めることが義務付けられているようなものだ。
ただし、総従業員2人以下の企業や、給料が毎月払われていない従業員や5月31日までに退職する予定の人は普通徴収に切り替えることが認められている。
●メリットデメリット
普通徴収と特別徴収の納付金額は変わらない。
普通徴収は年4回の徴収で、特別徴収は年額を12ヵ月で割って、給料から天引きされて毎月徴収される。給料から天引きされる分、痛税感がなく、ふるさと納税などを使えば得することなどに気づきにくい。
普通徴収は自ら支払うので、クレジットカードで支払うこともでき、自治体によってはポイントも貯められる。うっかり払い忘れて延滞すると、延滞税を課せられるのが、デメリットである。この点、特別徴収には延滞税を支払う心配はない。
住民税を普通徴収と特別徴収で支払っている場合のふるさと納税は
サラリーマンをしながら、不動産所得などがあり、勤務先では特別徴収、その他の所得は普通徴収で住民税を納めているという人も多いだろう。
この場合、ふるさと納税の住民税を双方から控除することはできない。基本は勤務先の特別徴収から控除されることになる。ただし確定申告で「自分で納付」を選択すれば、普通徴収分で控除を受けることもできる。
ふるさと納税の所得税と税額控除
ふるさと納税の控除は、所得控除と税額控除を組み合わせている。所得税分の所得控除と、住民税の税額控除がある。住民税は住民税基本分と特例分を組み合わせている。
●所得控除とは
所得控除とは、医療費控除や社会保険料控除なども該当し、14種類ある。
ふるさと納税は確定申告でしか所得控除されないので、ワンストップ特例制度では対象外となる。
●税額控除
所得控除を差し引いた課税所得に、税率をかけて計算した税額から直接控除される。ふるさと納税では、住民税基本分と特例分で控除される。
ふるさと納税の住民税控除の中身
住民税の税額控除がある。住民税は住民税基本分と特例分を組み合わせている。
●住民税基本控除
ふるさと納税額-2000円×10%が控除される。
●住民税特例控除
所得税額と住民税の基本分で控除しきれなかった分を、特例分で控除することになっている。
つまり、(寄付金額-2000円×(100%-10%-所得税の税率)となる。
ふるさと納税の上限額
ふるさと納税はいくらでも控除できるわけではない。家族構成や年収でそれぞれ上限額に違いがある。また、住宅ローン控除を使っている人や医療費控除を使っている人とも違ってくる。
ふるさと納税住民税の上限額の計算
例えば、30代独身で年収300万円(他の控除なし)の場合、どれくらい使えるだろうか?寄付金の上限額は2万5000~3万円くらいになるだろう。
40代年収600万円で妻は専業主婦で子供2人の場合、4万円近くが寄付金の上限額となる。
年収が高く、配偶者控除や扶養控除などの他の控除を受けてない人のほうが上限額は高くなる。
上限額を超えての寄付は、特に問題はないが、自己負担での寄付と同じ扱いになる。翌年に繰り越しなどの制度はない。
ふるさと納税で住民税をお得に節税
住民税は翌年6月から支払うので、税額に関心がない人も多く、痛税感を感じづらいかもしれない。
ただし退職して次の仕事が見つからない人やフリーランスの人などで、収入の増減が大きい人にとっては、収入が減っても前年の所得で住民税を払わなければならないので、大きな負担となってしまう。
自治体によっても住民税の額は異なるので、収入が変わったときの税額を知っておいたほうがよい。
住民税の仕組みを知る意味でも、ふるさと納税で寄付して年間いくら控除できるか、また上限額がいくらかなどをシミュレーションしておくとよいだろう。
文・ZUU online編集部、編集者・中村 優之介/提供元・ZUU online
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