「3次元円グラフ」は最悪のデータ提示方法
バーネット氏が「円グラフのデメリットをさらに悪化させるもの」として挙げているのが、「3次元円グラフ」です。
標準の円グラフは2次元ですが、「オシャレなデザイン」として、プレゼンなどでは3次元円グラフを作る人もよく見かけます。
しかし3次元円グラフには、「正確な割合を表現できない」という大きな問題があります。

例えば、上記の円グラフのカテゴリの割合はすべて同じ(3分の1)です。
そのことを正確に感じ取れるのは左端の2次元円グラフだけであり、3次元にすると、割合に違いがあるような印象を与えてしいます。
そのため3次元円グラフで視覚的に比率を提示するプレゼンターに出会った場合は注意しなければいけません。
もしかしたら、「作者が誤った印象を持たせようとしている」かもしれないからです。
単に「作成者が3次元円グラフのデメリットを考えられていない」ケースもあるかもしれませんが、複数の比率をこの方法で提示するプレゼンターは統計学や数学に疎い人である可能性が高いでしょう。

ここまで、統計学者であるバーネット氏が述べる円グラフのデメリットをお伝えしました。
とはいえ、円グラフにもそれなりのメリットがあるはずです。
どんなケースであれば円グラフを用いても良いのでしょうか。
円グラフが輝くのは「2つのカテゴリを比較する場合」
バーネット氏によると、円グラフはカテゴリが少数で、パーセンテージがはっきりと異なる場合に役立つようです。
またカテゴリが2つだけなら、その違いが小さくても、円グラフのメリットが生かされます。
例えば下の円グラフは、オーストラリアの2大政党(保守連合と労働党)の支持率を示しています。
支持率は労働党(Labor)が55%であり、保守連合(Coalition)が45%でした。

円グラフを見ると2つのカテゴリはそれぞれ半円に近く、この戦いが接戦であったことを瞬時に理解できます。
またカテゴリが2つしかないため、比較的僅差でも違いが分かりやすく、労働党が勝利したという点も瞬時に把握できるでしょう。
否定的な意見が多い円グラフにも、確かにメリットは存在するのです。
とはいえ、円グラフが輝くケースはかなり限定的です。

そのためバーネット氏は、「全体的に、円グラフの使用は控えめにするのがベストです」と結論付けています。
多くのデータを扱ったり、僅かな違いを明確に示したりする必要がある専門家たちにとっては、特にそう言えるのかもしれません。
いずれにせよ、データを視覚的に示すグラフには様々な種類があり、それらのメリットとデメリットをはっきりと知ってから、ケースバイケースで使い分けるのが最善でしょう。
参考文献
Here’s why you should (almost) never use a pie chart for your data
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。