パートで働くときなどに、103万円や130万円の壁という収入の上限の話を聞くことがある。しかし、なぜそれが収入の上限と言われるのだろうか。

103万円、130万円に関するQ&A

Q 103万円と130万円の壁の違いについて

103万円や130万円の壁とは、アルバイトやパートなどで働くときに、収入の上限の目安として、よく使われている金額だ。いずれも扶養の範囲を意味している。

103万円と130万円の2つの収入の壁があるのは、扶養として扱われている制度がそれぞれ違うことによるものだ。103万円以下は所得税や住民税で扶養控除が使える範囲、130万円以下は、社会保険で扶養に入れる範囲となっている。

 

Q 103万円の壁の計算方法は?

扶養に入るための収入の上限、103万円の本当の意味、そして計算方法は以下のようになる。

・103万円から、給与所得控除55万円を差引くと、48万円

・所得税で扶養控除の対象となるための要件:年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)であること

つまり、アルバイトやパートなどで給与収入を得ている人の年間収入が103万円以下なら、その人の年間合計所得金額は48万円以下になるので、扶養控除の対象となる。

 

Q 扶養と103万円の関係は?

アルバイトやパートで103万円以上稼ぐと、所得税の扶養控除の対象とならない。

例えば、子どもがアルバイトで年間103万円以上の収入を得てしまうと、親が年末調整や確定申告で申告をする際に、その子どもを扶養親族として申告できなくなる。その結果、親の所得税や住民税が増えることになる。

仮に子どもが20歳の学生だとすると、親は子どもを扶養親族として申告することで63万円の扶養控除(特定扶養控除)が使える。「63万円×税率」分の所得税や住民税が減額されるが、子どもが扶養から外れると、その減額が無くなってしまう。

仮に税率が10%と仮定すると、所得税と住民税(一律10%)合わせて、12万6000円の差となるので、かなり大きな差と言えるだろう。

 

103万円の壁とは何か?

年収103万円や130万円というのは扶養に入るための要件を意味している。103万円は所得税や住民税、130万円は社会保険や健康保険の扶養の範囲だ。

実は、この103万円という数字と130万円という数字の意味合いには微妙な違いがある。

社会保険の130万円とは?

社会保険の130万円というのは、年間の収入が130万円であれば、収入が給与であるかどうかを問われない。

例えば、不動産を所有していて家賃収入がある人や土地を売却して売却収入を得た人、フリーランスで仕事をしていて事業所得がある人などは、収入の原因に関係なく、年間130万円の収入という基準が適用される。(事業所得の場合は、収入ではなく、収入から必要経費を差し引いた事業所得の金額が目安になる。)

所得税の103万円とは?

対して、所得税や住民税の103万円というのは、給与収入に対してのみの目安だ。所得税や住民税の扶養控除の対象の正しい認識としては、年間の所得金額が48万円というのが本当のところだ。

103万円という数字は、給与所得控除を控除すると48万円になるので、103万円が扶養の対象になるといわれている。この点が社会保険の130万円との違いになる。

社会保険の130万円では、収入の種類に関係なく、年間130万円を超えると、扶養の範囲から外れることになる。一方、所得税の場合、給与収入と同様に、フリーランスなどの事業所得も103万円というわけにはいかない。

フリーランスの息子とサラリーマンの父親

父親は給与収入のみのサラリーマン、息子は最近独立開業したばかりの個人事業という例で考えてみよう。

息子は、WebライターやYouTubeなどさまざまな仕事で収入を得ようと頑張っているが、駆け出しなこともあって、収入は年間100万円ほどしかない。まだまだ父親から生活の援助を必要としている。

父親は息子を扶養していると思っていたが、年末調整の際、「息子さんは扶養控除の対象にはなりません。」と言われた。

息子の収入は、年間100万円で、103万円の壁を超えていない。だが、息子が行っている事業は、必要経費がほとんどなく、収入100万円のほとんどが利益(事業所得)となっていた。所得税では、年間の合計所得金額48万円までが扶養控除の対象だが、息子の所得が48万円以上だったので、対象外となったのだ。

このように、所得税での扶養控除の範囲103万円以下というのは、実は正しい認識ではない。

103万円を超えたら、税金が増えるのはだれ?

給与収入が103万円を超えたときに、最も税金が増えるのは、本人ではなく扶養者だ。

本人も課税されることがあるが、一番大きいのは、扶養控除がなくなることによって、扶養者の税金が上がることだ。

例えば、本人の給与収入が年間103万円を超え、合計所得金額が基礎控除の48万円を超えたとしても、生命保険料控除や社会保険料控除などで、超えた分を控除できるものがあれば、結果的に課税対象の所得が無くなり、所得税は103万円以下と同じ0円になることも十分にあり得る。

しかし、扶養者にとっては、本人が生命保険料控除などを使って、基礎控除(48万円)を超えた分の所得を控除して課税所得金額を0円にできたとしても、給与収入から給与所得控除を差引いた合計所得金額が48万円を超えた時点で、扶養控除の対象から外れることになる。

すると、扶養控除の38万円(例:一般の控除対象扶養親族) が控除できなくなるために、所得税が増えることになる。そして住民税にも影響してくることになる。

配偶者を扶養することの控除を受ける目安は、103万円ではない?

配偶者の場合は、扶養控除ではなく配偶者控除となる。年収が103万円を超えたとしても、配偶者控除の上に、配偶者特別控除があるので、103万円を超えたからと言って、すぐに扶養から外れるとは限らない。

配偶者特別控除は、金額が増加するにつれて、控除額が減る制度になっている。ちなみに、扶養者の年間の所得金額が900万円以下の場合、年間所得が95万円までであれば、配偶者控除と同じ38万円の控除が受けられる。

年間所得95万円というと、年間150万円の給与収入となる。年間150万円以下の給与収入であれば、配偶者控除と同じ金額の控除が受けられるため、配偶者の場合は、103万円の壁ではなく、150万円の壁になると言える。

しかし、その150万円の前に、130万円の社会保険の壁があるので、実質的には、130万円の壁が最初の壁になってくる。

住民税では103万円ではなく、98万円の壁 ?

住民税の場合は、103万円ではなく、98万円の壁と言われる。この98万円の壁も、103万円の壁と考え方は一緒だ。

住民税の基礎控除と所得税の基礎控除が異なるため、103万円ではなく、98万円の壁と言われている。

住民税の基礎控除:43万円 (所得税では48万円)

給与収入98万円から、給与所得控除55万円を差引くと、43万円となり、基礎控除の43万円を差引くと、課税所得金額は0円になる。

この場合の壁は、扶養者の扶養になるかどうかとは別で、本人の給与収入が課税されない範囲となる。もし生命保険料控除や社会保険料控除などの所得控除があり、課税所得金額を0円にできるものがあれば、98万円の壁を気にする必要はない。

年間の給与収入が103万円以下だから平気だと考えて、年末調整で本来使えるはずの生命保険料控除証明書を勤務先に提出しなかったために、住民税の納税が発生するケースもあので、注意したほうがよいだろう。

一番の壁は、130万円の社会保険の壁?

所得税や住民税、社会保険と、さまざまな壁があるが、一番大きな壁は130万円の社会保険の壁ではないだろうか。

扶養者が年収130万円を超えると、所得税の扶養控除、住民税の扶養控除、そして社会保険の扶養のいずれも対象外となり、一気に負担がかかる。

特に、社会保険の扶養から抜けると、扶養から抜けた本人が、国民健康保険などの健康保険料を支払うことになったり、配偶者の場合は健康保険料だけでなく国民年金保険料などの年金保険料も支払うことになったりする。

国民年金保険料だけでも、月1万6540円(2020年度) 、年間約20万円にもなるので、かなりの負担増に感じるだろう。

そのため、主婦層の多くが最も気にしている年収の壁は年間130万円となっているようだ。

老後を考えると、年収の壁を気にしないのもアリ?

老後の生活を支える一番の屋台骨は、なんといっても公的年金だ。最近では、NISAやiDeCoなどの貯蓄制度も整ってはきたが、やはり公的年金の安定感にはかなわないだろう。

公的年金は、老後の年金だけでなく、遺族年金や障害年金といったさまざまなリスクに対応可能で、民間の保険では代わりが効かないほどの充実した内容となっている。

公的年金を効果的に使う方法の一つとして、夫婦で共働きし、それぞれが厚生年金に加入することで得られるメリットもある。

例えば、妻が夫の厚生年金の扶養となっている場合、妻の受け取れる老齢年金は、老齢基礎年金(月約6万5000円)のみとなるので、夫婦で受け取れる老齢年金は、夫の厚生老齢年金と老齢基礎年金、妻の老齢基礎年金になる。

しかし、夫婦で厚生年金に加入していると、老齢厚生年金と老齢基礎年金が夫婦ともに受け取れるようになるので、共働きしていない夫婦よりも妻の厚生年金が受け取れる分だけ、世帯の 年金収入が増える。場合によっては、年間100万円以上増えることもある ようだ。

夫の年収があまり多くなく、夫の老齢厚生年金だけでは老後の生活費が苦しくなりそうだと思えるときには、あえて社会保険の扶養から抜け、妻も厚生年金に加入する手もある。

文・ZUU online編集部/提供元・ZUU online

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