様々な空間づくりを手掛ける「船場(センバ)」は、サントリーウイスキー100周年を記念して行った「サントリー山崎蒸溜所」のリニューアルにおいて、新ゲストルームの設計・施工、使い終えた蒸溜釜の銅素材を用いたゲート制作、ウイスキーの聖地「バー露口」の愛媛県からの移転などを手掛けた。

ウイスキーづくりの歩みが感じられる同蒸留所を訪れてみよう。

新ゲストルーム“The YAMAZAKI”

同社は、一部ツアーで使用する新ゲスト“The YAMAZAKI”の設計、施工を担当した。

“The YAMAZAKI”は、外に広がる山崎の竹林を眺めながら、テイスティングができる空間だ。

そこに、ウイスキー樽の再利用材(オーク材)と、役目を終えたウイスキーの蒸溜釜の銅素材でカウンターを制作し設置した。

原酒が染み出したことによる、樽材の色の変化を楽しむことができる。また、引き戸にも樽材を再活用した。

蒸溜釜のアップサイクル

銅製のウイスキーの蒸溜釜(ポットスチル)は、定期的な交換が必要であり、サントリーは、役目を終えた釜を単に銅としてリサイクルに回すだけではなく、先人の想いや歴史を伝える形で再利用したいという想いがあった。

そこで、100周年を迎える新たな山崎蒸溜所の装いとして、施設の玄関口に蒸溜釜の銅素材を再利用した山崎の“門”を制作。今までの歴史を形にしてゲストを迎えるゲートを創り上げた。

また、ウイスキー館内で展示する歴代のマスターブレンダーのネームプレートも蒸溜釜を圧延加工して制作したほか、新ゲストルームのカウンターにも活用した。

ものづくりへの情熱を施設内で感じられるよう、サントリーがこだわり抜いてきた蒸溜釜を至る所で再活用している。

「バー露口」カウンター等移設工事

1958年に愛媛県松山市で開業した「バー露口」は、店主の露口さんのつくるハイボールと、露口夫妻のおもてなしが多くの人を魅了し、「ハイボールの聖地」として親しまれてきた。

昨年9月、64年の歴史に幕を下ろし、全国のファンに惜しまれながら閉店。多くの人に愛され、日本での洋酒文化醸成に大きく貢献した「バー露口」を後世に残したいという想いから、この度、日本初のモルトウイスキー蒸溜所である「サントリー山崎蒸溜所」にバーを移転し、再現することとなった。

経年により取り扱いに高度な技術が必要であったため、高い木工加工のノウハウを持つ装備が、復元を前提に丁寧に解体・修繕を行い、移設が実現した。

バーの象徴的な存在であった、全長6メートルのラワン材一枚板のカウンターや、椅子、ペンダントライトなどの小物の数々も運び込み、当時の雰囲気まで忠実に再現した場を創り上げた。

「バー露口」は、山崎蒸溜所内のセミナールームに設置され、洋酒文化のレガシーを伝える場として活用される予定だ。

ジャパニーズウイスキーの魅力をより体感できる場へと生まれ変わった山崎蒸留所へ足を運んでみては。

サントリー山崎蒸溜所
所在地:大阪府三島郡島本町山崎5-2-1
営業時間:10:00~16:45(最終入場 16:30)

(MOCA.O)

「バー露口」の一般公開は検討中

※画像撮影は佐藤振一氏