ここまでねじれてしまうと台湾の外交と政策が頼氏の思う通りには行かなくなるのも目にみえており、場合により台湾が大きく二分化するリスクを抱える可能性が出てきてしまいます。つまり、台湾問題をめぐる東アジアの混乱は中国からの外圧という視点から台湾内部の問題へとポジションを変えていくことになるとみています。中国としては台湾内の分断化政策を推し進める算段は当然推し進めるはずです。

今回の一連の選挙の落としどころですが、争いごとを望まない台湾の人の深層心理が票に表れたとみています。例えば徴兵制を4か月から1年に伸ばすことを与党は決めていますが、若い人からは当然のようにブーイングが出ており、それが民衆党を支えた若者のチカラでもありました。これは台湾に限らず、韓国でも中国でももちろん、日本でも若者に「軍隊に行くか?」「戦争に行くか?」と問えば大半が「NO!」というのと同じです。

国家を守れ、という保守的思想と「じゃぁ、誰がどうやってやるの?ウクライナのような悲惨なことは見たくない、やりたくない」と誰もが思ってしまったのです。スマホを片手に心地よいライフを送れるならその見返りは多少我慢してもいい、と思う人が出てきたとすれば影響力の格差が明白に表れる時代とも言えるでしょう。ならば、大国の我儘は大国でないと抑え込めないともいえ、最終的にはアメリカの外交政策をどれだけ引き出せるかが勝負どころという気がいたします。

台湾の選挙で明白な勝者がいなかったことは現状を大きく変えることが難しいともいえ、案外、台湾の人にとっては好都合な結果だったのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月14日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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