皮を剥いでから調理することから名付けられた「カワハギ」。しかし、料理によっては皮を剥がずに解体したほうが良い場合もあります。

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意外と知られていない「カワハギの皮を剥いだらダメ」な理由 先に捌くべき?

カワハギの旬がきた

冬に美味しくなる魚はたくさんありますが、その中でも人気の高いもののひとつが「カワハギ」です。

カワハギはフグ目に含まれる魚ですが毒を持たず、内臓を含めすべて食べることが可能です。そして冬になると肝(肝臓)に脂肪を溜め込み、まるでフォワグラのようになります。

意外と知られていない「カワハギの皮を剥いだらダメ」な理由 先に捌くべき?カワハギの刺身(提供:PhotoAC)

身はフグのように弾力があって旨味が強く、肝はトロッとして濃厚な味わい。肝を溶かした醤油につけて食べる刺身や、ペースト状にした肝を刺身にまとわせて食べる「肝和え」はまさに絶品です。

肝を美味しく食べるために

カワハギの肝を美味しく食べるためには、生きている状態で血抜きを行う必要があります。活け締め血抜きまで施した大型のカワハギは買うと非常に高価なこともあり、その味の良さを知る人は自ら生きている個体をゲットすべく、釣り竿を持って海へと向かいます。

意外と知られていない「カワハギの皮を剥いだらダメ」な理由 先に捌くべき?カワハギの肝和え(提供:PhotoAC)

生きた個体を手に入れたら、できるだけ元気なうちにエラ孔にハサミを入れ、頭部方向下向きに切れ目を入れます。このとき、腹部方向にハサミを入れてしまうとエラがうまく切れないばかりか、大事な肝を傷つけてしまうので厳禁です。

その状態で海水につけておくと、自動的に血が放出されていきます。暫く経つと体色が白くなり、動かなくなっていくのでそのタイミングで水からあげ、氷で冷やしながら持ち帰ります。

生で食べるときは「皮を剥ぐな」

丁寧な処理をして持ち帰ってきたカワハギはやはり生食が最高。肝醤油の刺身も肝和えも好みで選べますが、いずれにしてもまず刺身を造る必要があります。

カワハギの刺身を造るに当たり、知っていると便利なことがいくつかあるのですが、中でも大事なものとして「カワハギは刺身にするとき皮を剥がないほうが楽」というものがあります。

意外と知られていない「カワハギの皮を剥いだらダメ」な理由 先に捌くべき?皮を剥いではダメ!?(提供:PhotoAC)

カワハギは鱗と皮膚が一体化した丈夫な皮に包まれており、手で引っ張るだけで簡単に皮をはぐことができます。そのため名前の通り、調理前にこの皮を剥いでしまうことが多いのですが、実は彼らの皮はこれだけではなく、筋肉の表面に薄皮もついています。

この薄皮はコラーゲンが主体で、加熱調理の際には気にならなくなるのですが、生食の際には歯に障るので剥いでしまうのが望ましいです。しかし薄皮だけを包丁で引こうとしてもすぐにちぎれてしまうために難しく、諦めて薄皮付きの刺身を作ってしまう人も多いです。

なのですが、実は外皮をつけたまま三枚におろし、その状態で包丁で皮を引くと、薄皮が外皮にくっついたまま一緒に取れてしまいます。この状態で刺身にすると、本当に美味しいカワハギの刺身、更には肝和えを食べることができるのです。

カワハギを生で食べるときには皮を剥がない、ぜひ頭の片隅に入れておいていただけたらいいなと思います。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>