世界各国に魚の美味しい食べ方がありますが、南米に伝わるとある調理法は、我々にとっても非常に親しみのある味わいです。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

どんな魚も美味しくなる魔法の調理法【セビーチェ】磯臭くても生臭くてもOK

魚の調理における「臭み消し」

我々日本人が大好きな食べ物といえば、もちろん魚介。様々な料理で賞味される食材で、タンパク質系食材の中では最も用途が広い物だといえますが、どのように調理をするとしても必ず必要になる工程があります。それは「臭み消し」。

どんな魚も美味しくなる魔法の調理法【セビーチェ】磯臭くても生臭くてもOK生臭いボラの下処理(提供:PhotoAC)

魚類はどれも多かれ少なかれトリメチルアミンをはじめとした生臭さ成分を含み、これを洗い流したり調理で飛ばしてあげないと美味しく食べることができません。

トリメチルアミンは水溶性のため、生臭みは水洗いや茹でる・煮るなどの調理で除去していくことができますが、それ以外にも調味料や他の食材で臭みを感じにくくする事もできます。

魚の臭さを消す「三種の神器」

そんな「魚の臭みを消す」調味料や食材は数多くありますが、筆者が最も効果的だと思っているもの3つを勝手に「三種の神器」と規定し、ご紹介しようと思います。

まず1つ目が「酒」。酒類に含まれるアルコールは加熱すると生臭み成分とともに蒸発する「共沸」という現象が起きます。これにより生臭みがなくなるのです。

どんな魚も美味しくなる魔法の調理法【セビーチェ】磯臭くても生臭くてもOKライム(提供:PhotoAC)

2つ目が「柑橘類」。生臭み成分はアルカリ性の物が多いのですが、柑橘類果汁に多く含まれる酸が中和してくれます。加えて柑橘類の皮に含まれる香油成分リモネンが生臭みを上書きしてくれるのです。

そして3つ目が「タマネギ・ニンニク」。本体に強い香りがあり、これが特に魚の磯臭さを上書きする力を持ちます。磯臭さはしばしば「古くなったタマネギの匂い」に例えられますが、新鮮で強烈なタマネギやにんにくの臭いを合わせることで気にならなくなるのです。

手軽で最強?の調理法「セビーチェ」

我が家では、この「三種の神器」を活用したとある料理をしばしばつくります。そのひとつが「セビーチェ」です。

セビーチェは南米、特にペルーでよく食べられている魚料理で、海外では珍しい生の魚料理です。作り方は生の魚介類に塩味を付け、ハーブやタマネギ、ニンニク、レモンやライムの果汁と和えるというもの。赤身魚に白身魚、イカ・タコ、貝類に至るまで好みの生の魚介で作ることができ、我々日本人の舌にもよく合います。

どんな魚も美味しくなる魔法の調理法【セビーチェ】磯臭くても生臭くてもOKセビーチェ(提供:PhotoAC)

食べるときに白ワインや日本酒を合わせれば、より一層臭みが気にならなくなり、美味しく感じられます。なお、食べ終わったあとに皿に残る汁は「レチェ・デ・ティグレ」と呼ばれ、魚の旨味が溶け込んでおり、ペルーでは飲み干すのが一般的です。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>