「ゲップができない」ことは不安や抑うつにも繋がっていた
チームは本研究の参加者を集めるために、アメリカの掲示板サイト・Redditを利用しました。
Redditには、特定のテーマごとにコミュニティを作成できるサブレディット(subreddit)というものがあります。
チームはそこで「r/noburp」というコミュニティを作り、現在ではR-CPDの情報を共有する約2万6000人以上のメンバーが参加しています。
研究では、コミュニティメンバーに「ゲップができない症状を持つ人がいたら質問に回答してほしい」と依頼し、結果199名の参加者を得ました。
参加者には18歳〜89歳までの男女がいましたが、平均年齢は31歳で、4分の3が女性となっています。
一般的な症状について尋ねたところ、197名が「ゲップができない」と報告し、また195名が食後の腹部膨張および胸部圧迫による痛みを訴えていました。
加えて、参加者の93%は胸から首元にかけてゴロゴロ音が頻繁に鳴り、89%が過度の鼓腸、55%が嘔吐の困難を報告しています。
参加者の大半はR-CPDの症状を毎日経験しており、その不快感レベルを10段階で評価してもらったところ、平均7.3と高い数値が示されました。

さらに多くの人が身体的苦痛の他に、ゴロゴロ音を原因とする社会交流での気まずさ、不安や抑うつの感情を抱いており、心理的にも悪影響を及ぼしていることが確認されています。
参加者の多くはR-CPDを発症した時期を覚えていませんでしたが、約4分の1は小児期〜10代前半に、別の4分の1は10代後半〜20代前半に発症したと回答していました。
また半数の人は医師に診てもらったことがありましたが、「医師が症状を緩和する方法を理解していたか」という質問に対して、約32%が「理解してなかった」、約59%が「まったく理解していなかった」と答えています。
それから参加者の23%は実際にボトックス注射による症状の改善を報告していましたが、他のほとんどの参加者は独自の対処をしており、中でも「体の姿勢を垂直から横向きにすることで楽になった」といいます。
以上の結果から、R-CPDは医療従事者にとってもまだ馴染みがなく、患者は十分に適切な治療を受けられないままであることが示されました。
研究主任のジェイソン・チェン(Jason Chen)氏は「今後の取り組みとして、R-CPDの認知度を高めることに集中すべきであり、それに伴って治療法の確立や改善を促していきたい」と話しています。
もし「私もゲップできない!」という方がいれば、症状の改善のためだけでなく、医療の発展のためにも医師に相談すべきでしょう。
参考文献
‘No burp’ syndrome causes causes flatulence, ‘awkward gurgling’
How does the inability to burp affect daily life?
Retrograde Cricopharyngeus Dysfunction (RCPD)
元論文
Retrograde cricopharyngeus dysfunction: How does the inability to burp affect daily life?
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部