食品添加物を使用しないことによるリスク

 では、食品添加物は体に害を与えるのか、また、使用しないことのリスクはあるのか。前出・西島氏はいう。

「食品添加物が体に害だというのは嘘です。食品添加物は、食品安全委員会の評価に基づき厚生労働省が厳重に審査したうえで『絶対に安全』と判断したもの、かつ、使用することによって消費者が恩恵を得ると認められたものしか、使用は認められていません」

 東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科の阿部尚樹教授はいう。

「ある食物を食べる際にゼロリスクであるということはあり得ません。大多数の人にとってリスクがない食物でも、その食物にアレルギー反応を示す人が少量でも食べればアナフィラキシー反応などの危険な反応が生じます。食品の安全性を考えるとき、『食品添加物は体に害』と決めつける言い方は正しくありません。食品添加物は、消費期限が伸びたり、腐りにくくなったりといった『使うメリット』がないと、使ってはいけないことになっており、国が科学的根拠を基に定めた使用基準や食品衛生法が遵守されていれば、食品添加物が健康被害を生じるリスクは極めて低いといえます。

 商品のイメージを良くするために『食品添加物不使用』を謳うメーカーもあるでしょうが、添加物が使われていなければ消費期限が短くなったり、より厳密に保存に注意を払う必要が生じたりし、食中毒のリスクが高まります。添加物不使用の食品を選んでそのようなリスクを背負うのか、添加物が使われていることのリスクを気にするのか、どちらのリスクをとるのかを判断するのは消費者個人の責任です。『添加物を使用していないから体に良い』と単にイメージで判断するのではなく、使用していないことによるリスクを十分に理解する必要があるといえるでしょう」

 では、一部でブームの「オーガニック志向」はどうみるべきか。前出・西島氏はいう。

「農薬を使用しないで栽培した食材を美味しいと感じる人は、食べてよいでしょう。農薬の使用については、品目ごとに国が非常に厳しい基準値を設定しており、その基準値も『それ以下であれば絶対に健康被害はない』というレベルの数値です。また、使用違反がないかどうかについては、各自治体の衛生研究所等が日々、抜き出し検査を行っています。ですので、基本的には、市販されている作物は安全だと考えてよいです」

(文=Business Journal編集部、協力=協力=西島基弘/実践女子大学名誉教授、阿部尚樹/東京農業大学教授)

●西島基弘/実践女子大学名誉教授

薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。

提供元・Business Journal

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