
レイバックは新たなスバルの挑戦。大人が気になる個性派
レヴォーグ・レイバック(以下レイバック、ベース車を指す場合はレヴォーグと表記)は、JMS2023のプレスデー初日、SUBARUブースで正式発表された。
リリースには、「レヴォーグが持つ先進安全/スポーティ/ワゴンという3つの価値に加え、SUVの価値である自在性と、上質さを兼ね備えた、スバルSUVラインアップ中で、唯一無二の存在」と記載されている。「上質」と「唯一無二」というキーワードどおり、レイバックにはスポーティさを特徴とするレヴォーグとはひと味違うキャラクターが盛り込まれている。


現行の2代目レヴォーグが登場してから3年。当初はレイバックの予定はなかったそうだ。とはいえレヴォーグをSUV化するという発想は自然に思える。その一方で、すでに身内には多数のSUVが存在する。どのように棲み分けを図るのか。簡単なようで難しい。
スバルのSUV各車は、伝統のシンメトリーAWDを武器に、圧倒的な走破性を誇る。昨今のSUVの中では本格派といえる。スタイリングはどちらかというと武骨で、アウトドアシーンが似合う。だが、都会を舞台に使う場合、イメージ的にやや「トゥーマッチ」な印象もあった。昨今人気の、いわゆる「都会派」の印象に欠けていたのである。そこでレヴォーグに白羽の矢が立てられた。
レイバックは乗り心地と静粛性を楽しむ独創SUVワゴン
レイバックは、「都会派」らしく、見た目もこれまでのスバルSUVラインアップが持つラギットさとは違う世界観を表現。一段と上質なスタイルを実現するために手が加えられた。レヴォーグのワゴンフィールをそのままに、ちょっぴり力強さをプラスしている。機能的にもSUVとしては、たとえばクロストレックよりもライトな設定で、スバルが誇るX-MODEも搭載されていない。


とはいえ、そこはスバルである。最低地上高をレヴォーグよりも55mm高い200mmとし、225/55R18サイズの大径タイヤを履かせた。タイヤとバンパーは障害物を乗り越えやすいように設計されており、悪路走破性もそれなりに確保されていることが期待できる。
なにしろ200mmもの最低地上高と4WDの組み合わせである。基本は都会派といいながらも、実はアウトドアユースにも十分すぎるほど対応できる実力の持ち主と考えて問題ないだろう。
そのうえで、レイバックが大事にしているポイントが、前述の上質性である。具体的には、走りと乗り心地の両立だ。一般的にベース車に対してリフトアップしたクルマは、ロールなどの挙動を抑えるために足回りを強化する。そのため乗り心地が硬くなっているケースが多い。だが、レイバックは違う。ベースのレヴォーグ以上に快適性にこだわった。とくにリアのサスペンションストロークを増やし、突き上げのない懐の深いドライブフィールを追求している。
路面への当たりがマイルドになったのは、大径のオールシーズンタイヤの採用と、専用シートの装備が大いに効いている。
オールシーズンタイヤは静粛性にも貢献している。持ち前の高いボディ剛性、遮音性、吸音性、制振性に加えて、静かなタイヤを装備した効果は大きい。レイバックはクラス水準を抜く快適なクルージング空間を実現した。


静かな車内で存分に音楽を楽しむ配慮も万全。上質で臨場感のある音響空間実現のために専用チューニングを施したハーマンカードンサウンドシステムが標準装備されるのもレイバックならではである。
乗用車的なドライビングポジションのまま着座位置が上がっているのでシートに座ると独特の感覚があるが、見晴らしのよさは市街地でも心地よく感じられるに違いない。
走り味は十分に煮詰められている。ブレーキを踏み、ステアリングを切り、曲がってアクセルを踏んだときの一連の動きとつながりは極めて自然。ドライバーズカーとしてちょうどいいバランスに仕上げられている。車高を高くしたデメリットは、いっさい感じられない。
レヴォーグは2.4リッターボクサーターボ(275ps/375Nm)が選べて、しかも2.4リッターのAWDシステムはACT4ではなくVTD-AWDになる。これに対してレイバックのエンジンは1.8リッターのターボ(177ps/300Nm)のみ。レヴォーグ同様、2.4リッターターボがあればなおよいのにという気がしてくる。だが、エンジンを限定したことには理由がある。
開発陣は、「レイバックには2.4リッターターボはふさわしくないと判断してあえて見送った」という。なぜなら「レイバックは速さではなく、快適さを味わうSUVだから」だ。確かに、WRX・S4と同じパワートレーンを搭載する仕様は、レヴォーグなら納得だが、レイバックには似合わないかもしれない。


開発関係者からはトヨタ・ハリアーの名前がちょっと出たが、直接のライバルといえるクルマが即座に思いつかないのもレイバックの面白いところ。それだけ独創的なクルマということだろう。レイバックは、熱烈なスバルファンはもちろん、これまでスバルとあまり縁のなかったユーザーも魅了するマルチな実力を持っている。「こんなSUVを待っていた」という人は意外に多いのではないだろうか。