事実、過去30年の副大統領、アル・ゴア、ディック・チェイニー、ジョー・バイデン、マイク・ペンスの支持率をみると、いずれも就任時から右下がりをたどり、ハリスと同様の傾向を示す。とはいえ、ハリスの不支持率は彼らよりもさらに低く、また就任時からの低下の度合いも大きい(Los Angeles Times, December 18, 2023)。

何故ハリスはかくも不人気なのか。大きく3つの理由が考えられる。

第一に、2021年6月の初外遊における失策である。ハリスは移民問題を根本的な原因(たとえば貧困、犯罪、失業などの問題)から解決すべく、メキシコとグアテマラを訪問した。ところが、決死の覚悟で米国行きを求めるグアテマラの人に「来ないで」「来ても追い返されるだけ」と無愛想に言い放ち、NBCニュースのインタビューでは何故移民希望者で溢れかえるメキシコ国境を視察しないのかという質問に「ヨーロッパもまだ訪問していない」と的外れな応答をして批判を浴び、政治的に無能とのレッテルを貼られた(NBC News, June 11, 2011)。

この一件を契機に不支持が支持を上回るようになった。初の大舞台での失策が今でも尾を引いていると思われる。

次に、ハリスがバイデンの指示により党派的対立が大きく、有権者の間でも意見が二分する難しい政策課題に取り組んでいる点である。先の移民問題が然り。加えて、昨年最高裁が下した妊娠人工中絶合法性を覆す決定に対し、彼女は政権を代表して女性の自己決定と中絶の権利を強く訴え続けているが、これも政治的には貧乏くじである(NC NEWSLINE, July 16, 2023)。

最後に、彼女が大統領に次ぐ地位に登り詰めた初めての女性、しかもインドとジャマイカの移民家庭出身という点である。女性や民族的少数派に対する差別や偏見が根強く残る米国において、彼女のバックグラウンドを苦々しく感じる有権者も少なくないだろう。しかも、人は見慣れた景色が大きく変わることにしばしば戸惑う。有権者がこれまでとは全く異なるタイプの副大統領に違和感を覚えても不思議ではなかろう(CBS NEWS, June 27, 2023)。

さて、不人気なランニングメイト、バイデン再選の足を引っ張る凶となるのか、それとも案外吉か。次回考えてみたい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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