「お金が貯まりやすい家計」とはどのような家計だろうか。家計の要素を大きく分けると、「現預金」「物」「借金」が混ざり合って出来ている。この3つをそれぞれに整理することであなたの家計の思わぬ弱点を発見できる。

そのときに「バランスシート」と概念を使うと分かりやすい。従来、バランスシートは企業の経営成績を付けるための一つとして使うのだが、最近は個人が家計の見直しや分析に使うことも増えてきた。それでは以下で、お金が貯まりやすい家計かどうかを簡単に見抜く方法を紹介していこう。

バランスシート「3つのステップ」

バランスシートは3ステップで誰でも簡単に作ることができる。数字を当てはめながら説明しよう。まず紙を用意して大きくT字を書いておこう。

【ステップ1】家計の資産を書き出す

T字を書いた左側に、「現預金」と「物」を並べて最下段に合計を記すことから始める。

(家計内訳)
①現金:100万円
②定期預金」1000万円
③株式(時価):500万円
④生命保険(解約返戻金):400万円
⑤マイホーム(時価):2300万円

⑥自動車(時価):200万円

資産合計:4500万円

①~④までを、「流(なが)れ動く」資産ということで、「流動資産」と呼ぶ。変動の大きな財産ということだ。そして、⑤・⑥を「固定された資産」という意味で「固定資産」と呼ぶ。変動が少ない財産ということだ。

【ステップ2】借金を洗い出す

次に、T字の右側に横線を引いて上下分割にし、上段に「負債」を、下段には「T字の左側と右側上段との差額」を記入しておく。

(負債)
住宅ローン残高:2500万円

カーローン:200万円

負債合計:2700万円

【ステップ3】家計の余力を算出する

そして、最後に最も大切な右側下段だ。

(自己資本)
資産合計:4500万円

ー負債合計:2700万円

自己資本:1800万円

この右側下段に書かれた数値は家計の余力であり「自己資本」と呼ぶことにしよう。ここまでできたら次に、企業が経営分析につかう手法を使いながらお金が貯まりやすい家計かどうかの分析をしてみたい。

チェック① ローンに頼りすぎていないか?

ローンが少ない家計は返済が少ないためお金が貯まりやすい。「自己資本÷資産×100」で検証でき、数値が高いほどローンに依存せずやりくりしている家計だ。上記例では自己資本1800万円÷資産4500万円×100=40%である。これは企業の経営分析で判断する数値として見ても悪くはない。

この数値が低いときの改善策は資産を増やすか、ローン残高を減らすことだ。前者は当然のことであるから後者について触れたい。仮に住宅ローンの繰上げ返済をして500万円ほどローン残高を減らしたとする。すると資産(左側)と負債(右側上段)がともに500万円減り、数値は自己資本1800万円÷資産4000万円×100=45%と改善する。

ただし繰上げ返済は手元資金が減るため、単に数値を高めるためにするのではなく今後のライフプランや次のチェック項目②を考えたうえで行いたい。

チェック② ローン負担は大きすぎないか?

資産に対して借金の割合が大きすぎるとイザというとき大変になる。「負債(右側上段)÷資産(左側)×100」で分析したい。上記例では、「負債2700万円÷資産4500万円×100=60%」となる。つまりローン残高よりも持っている資産が大きいため万が一のときにはマイホームや自動車を売却すればローンは完済できるということだ。この比率が100%を超えるようであれば早急に改善が必要だ。

優先すべき改善策は、ローン残高を減らすことだ。その方法としては、①処分できる資産があれば売却してローン返済に充てる、②毎月の返済額を引上げて元金の減り方を早める、③低金利のローンに借換えをするなどが考えられる。さらに節約をして現預金を増やしたり運用で収益性を高めたりする努力をしたい。

チェック③ 資産が多ければ良いのか?

資産(左側)だけを見てみよう。資産が多ければ良いかというとそうではない。中身が大切だ。なぜならマイホームなどの「物」に比べて「現預金」が極端に少ないと急な出費に対処できないからだ。極端な例を示すと、資産は1億円あるがその内訳はマイホームや自動車が9900万円、現預金が100万円という状態だ。これでは急な出費に対処しにくい。

資産に占める流動資産の割合は「流動資産(左側の一部分)÷資産(左側)×100」で確認できる。数値が高いほど現金化しやすい資産が多いことを示す。具体的に何パーセントであれば良いかは家計が今後どのような資金を必要とするかによる。例えば、学資金がかかる時期が近ければ流動資産を高めるような準備をしておきたい。

合わせてライフプランも考える

このようにバランスシートを使って家計を眺めるといろいろな角度から簡単に家計の健全性などをチェックできる。毎年一回決まった時期に作成すると過去からの変化がわかるためより良い改善策が生まれてくるだろう。

最後に留意点がある。バランスシートにはローンの利息額や利子・配当金は表れてこない。そのため住宅ローンの繰上げ返済や金利変動による利息額の変化、または運用環境の変化で収益性がどう変わるのかなど、これらを加味した未来の家計シミュレーションには、専門家に相談していただきたい。

文・中谷俊雄(FPオフィスライズ 代表)/ZUU online

【関連記事 PR】
iDeCo(イデコ)を40代から始めるのは遅いのか
ゴールドカードのメリットや作り方
「ふるさと納税」するなら知っておくべき5つのこと
ポイント還元率の高いクレジットカード11選
40代が知っておきたい保険の知識まとめ