プレゼントが決まらないときには相手に聞いたほうがいい

オンラインで募集した198名を、過去に参加した(あるいは自分の)結婚式を思い出してもらったうえで①プレゼントを贈る側と、②プレゼントをもらう側の2つのグループに分けました。

また参加者にはプレゼントのおおよその値段と、相手との関係性、プレゼントの種類(リクエストに沿ったものか否か)を回答してもらっています。

そしてそのプレゼントに対しどれくらい嬉しいと思うか(贈る側のグループは、相手がもらったときにどれだけ嬉しいと思うか)を評価しました。

分析では、プレゼントの種類(リクエストに沿ったものか否か)で贈る側ともらう側にはどのような考えの違いがあるかを比較しています。

実験の結果、贈る側は相手にリクエストしていないものとリクエストしたものを同程度に相手は喜ぶだろうと予測したのに対し、もらう側はリクエストしていたもののほうが嬉しいと評価したのです。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Gino & Flynn, (2011).

またこの傾向はプレゼントの値段や相手との関係性で変わりませんでした。

これは、贈る側がもらう側の視点になって考えることが難しいことを意味し、プレゼントを贈る側ともらう側の食い違いを生じさせていることが分かります。

では他の場面ではどうなのでしょうか。

後続の実験では、誕生日のプレゼントを渡す・もらう状況を参加者に想定させ、同時にどれくらいそのプレゼントが相手のことを思って選ばれたプレゼントに感じるかを評価してもらっています。

実験の結果、贈る側は相手にリクエストしていないものとリクエストしたものを同程度に相手を思って選んだと評価するのに対し、もらう側は事前にリクエストしていたもののほうが自分を思って選んだプレゼントだと感じ、嬉しいと評価しました。

実験の結果を改変。
実験の結果を改変。 / Credit: Gino & Flynn, (2011).

この結果は、当日まで分からないのようなサプライズ感を大事にした方が良さそうな誕生日であっても、事前に相手の欲しがっているものをきちんと確認し、そのプレゼントを渡した方が喜ばれることを意味しています。

研究チームは「このような贈る側ともらう側の食い違いが生じるのは、多くの人が渡す側の視点でプレゼントを選んでいるからだ。」と述べています。

研究の結果からはリクエスト通り、プレゼントを渡すことで、相手が喜ぶ可能性が高いことが示されましたが、やはりプレゼントにサプライズ感や意外性を出したいと思う方もいるでしょう。

そのような人にはシンガポール大学のアデル・ヤング氏(Adelle Yang)らの研究で報告された贈る側ともらう側の食い違いを回避する方法を試してみてはいかがでしょうか。

それは「受け取った人が自分のいないところでプレゼントを開けたら」と想像するというものです。

そうすることで受け取った人が箱を置けたときに「あっ」と驚く様子を見たい(欲しがっているものかどうかは二の次)という、贈る側特有の思考から距離を置くことができます。

他にも食い違いを防ぐ方法として、自分がもらう側になった場面を想像し、プレゼントを受けとる相手に近い思考を促す工夫が考えられます。

プレゼントを購入する前に、「自分がもしそのプレゼントをもらったら」あるいは「相手はその場でプレゼントを開けない」と考えると、渡す側の押し付けにならない、相手に配慮したプレゼント選びができるかもしれません。

参考文献

Research explains why some presents are great to give but not to receive

3 Reasons Why Gifting Goes Wrong

What Makes a Great Gift?

元論文

Why Certain Gifts Are Great to Give but Not to Get: A Framework for Understanding Errors in Gift Giving

Give them what they want: The benefits of explicitness in gift exchange

The Smile-Seeking Hypothesis: How Immediate Affective Reactions Motivate and Reward Gift Giving

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。

編集者

海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。