欧州の盟主ドイツはコロナ禍を皮切りに、ウクライナ・ロシア戦争、イスラエルとハマスのガザ戦争の危機の影響を受けてきた。ドイツの政界は、16年間のメルケル政権から社会民主党、緑の党、自由民主党の3党から成るショルツ連立政権にバトンタッチした直後だった。
ショルツ首相は政権発足時(2021年12月8日)、「Zeitenwende」(時代の転換)というキャッチフレーズを掲げて出発したが、政権任期の半ばを迎え、コロナ禍はようやく峠を過ぎ、ウクライナとロシア戦争では米国と歩調を合わせて何とかドイツのメンツを維持し、中東紛争ではイスラエルへの無条件支持を掲げてきた。
そのような中、今度は政権を吹き飛ばすような危機が国内から飛び出してきた。独連邦憲法裁判所は11月15日、ショルツ政権が2021年末、新型コロナウイルスのパンデミック対策予算の未利用分を気候変動基金(KTF)に振り替える予算調整措置を実施したが、それは違憲に当たると判決を下したのだ。この結果、社会民主党(SPD=赤)、緑の党、そして自由民主党(FDP=黄色)の3党から成るショルツ政権(通称「信号機連立」)はKTFなどへの財政資金600億ユーロを失うことで財政危機に陥ったのだ。
以上、簡単に振り返った。ショルツ政権は任期4年の半分の2年間、複数の危機を同時期に直面してきた。現政権と比較するならば、メルケル前政権の16年間は移民問題などもあったが、相対的に平和な時代だったといえる。
「危機モード」がドイツで2023年の言葉に選ばれたのは当然だ。ちなみに、ドイツの若者の2023年の流行語は「Goofy」(グーフィ)(間抜けな」が選ばれたという。世代が違うこともあって、若者の流行語の背景は良く分からないが、社会、政治の現状を斜めから批判的に見ている若者というイメージは浮かぶ。
上記で挙げた危機以外にも、さまざまな危機が起きている。ひょっとしたら、新しい「危機」が今後も生まれてくるだろう。その結果、人間の精神生活への影響も看過できない。若者にうつ病が増え、自殺する者も増えている。現在の危機は進行形だ。解決の目途が立っていない。現在の危機は2024年に入っても続行するだろう。
いずれにしても、「危機モード」という言葉には本来、一種の「危機管理」という意味合いが内包している、と理解すべきだろう。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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