特定のテーマにフォーカスするのは難しい

 市役所職員の文章の作成や要約、アイデア創出といった分野での業務効率化あればAIの実用化は可能だろうが、市民相手のサービスで実害が生まれる可能性があるとなると「ごくたまに間違える」というレベルであっても、導入は難しくなるようだ。そうなると、ChatGPTは「ゴミ出しの案内すらできない」ということになる。

「GPTはネット上などの膨大なデータを学習します。世界中の膨大なテキストデータを学ぶので、特定の地域のゴミ出し案内に使うにはチューニングやプロンプト・コントロールが必要になります。過去のデータも学習対象になっているので、過去のルールを答えてしまわないようにコントロールすることも必要になります。現在のGPTのバージョンであれば、相対性理論をかなり正確に説明することすら可能ですが、学習データ量が巨大すぎて逆に特定のテーマ、今回であれば、特定地域の特定の曜日のゴミ出し案内にフォーカスするのは難しくなるのです。正しい情報が出ていても、加えて余計なデータが出てしまうこともあります。特定の情報を繰り返し学習することよるアプローチは、不可能ではないものの、言語モデルの規模が大きくなればなるほど、チューニングとコントロールは難しくなる面と簡単になる面があります。いずれにしろ容易ではありません。

 おそらく正答率94.1%に上げるまでにかなり苦心されたと思いますから、99%に達するための手間暇やコストも少なくはありません。特定分野へのチューニングやコントロールによるフォーカスについては今後精度が上がっていくでしょうが、現段階ではその手法については実験や研究が繰り返され、発展途上といえます。ただ、技術的問題だけでなく、99.9%であろうと、99.99%であろうと、人間の心理としては不安が残るものです。このような心理的問題と技術の双方がどのように折り合うか、という点が、今回の問題だけでなく一般的に、GPTなど大規模言語モデルを用いたサービスの議論のポイントとなります。技術の向上と社会的なコンセンサスのあり方、双方の発展によって、大規模言語モデルの社会実装は広がっていくかと思います」(同)

 ChatGPTの活用は多言語対応が容易といったメリットもあったのかもしれないが、現段階では「ゴミ出し案内に使うにはオーバースペック過ぎる」といえそうだ。 (文=佐藤勇馬、協力=三宅陽一郎/ゲームAI開発者)

提供元・Business Journal

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